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座談会【コンピュータと印刷をめぐって DTP・文字組版・漢字問題 ETC.】
北島町立図書館・創世ホール発行 「創世ホール通信/文化ジャーナル」 40-46号 1998年5-11月 連載(全7回)
出席者
■前田年昭(ライン・ラボ,日本語の文字と組版を考える会)
▲府川充男(聚珍社)
◆小池和夫(聚珍社)
▼横山壽信(聚珍社)
●小西昌幸(創世ホール)
収録◎1998年2月23日,東京神楽坂・聚珍社
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【連載第7回】初出「創世ホール通信/文化ジャーナル」46号(1998年11月1日,北島町立図書館・創世ホール発行)
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| 小西● |
ときどき雑誌などで,途中の文章から数行分,急に文字の線が細くなっているものがあります。たぶんその部分は後で貼り替えたのだろうと思われますが,これはあまり見栄えの良いものではないですね。府川さんの『組版原論』には,電算写植における版下印画紙の出力をする際に,出力センターの現像液の残量の関係で濃度に差が生じることがあるから,1字だけの直しでも1ページ分なり1台分を再出力しなくてはならないことが多いのだという趣旨のことがはっきり書かれています。確かにコピー機でもトナーの残量で刷り上がりが違ってくるわけで,組版の世界は本当に奥が深いといわざるをえない。物書きの人や編集者は,そういう世界のことをもっと知っていたほうがよいと思います。だって府川さんは,出力センター密集地域のシステムは24時間フル稼働に近いため,現像液の管理が甘いということや,そのフル稼働は値引き競争が背景にあるという業界の事情までお書きになっている(笑)。 |
| 前田■ |
写植の次元の漢字問題になりますが,原稿をみて「どのシステムを使えばこの漢字を打ち出せるか」という判断ができる人間がいないことも問題なわけです。編集者はシステムを知らないから,仕事を受け取ってどのシステムで出せば効率が良いかという判断ができない。これは致命的なんです。この判断が非常に大事なんですが。 |
| 小池◆ |
例えばいわゆる雑誌の世界──殆ど写研さんが強い世界──で,写研さんのこの書体においてこの文字があるかないか,この情報にタッチできる人間の数が非常に少ないんですよ。いや,本当にその気になったら,府川さんみたいに印刷所に乗り込んでいって,基本セット3級4級,この書体だったら何級まで持っているか,外字のABがあるのかないのか,それまでやっちゃう。でもそういう燃えたデザイナーは,日本にたぶん2人ぐらいしかいない。 |
| 府川▲ |
書体を指定することが,どこまで責任をもつことなのかということを分かっていないと。この書体は,少なくともどこまでがリリースされているかを知っていること,これが第1条件。第2条件として,組版現場に実際に装備されているかどうかを知ること。それは仕事に入る前に,一番最初に確認しておくべきことなんだけどね。 |
| 前田■ |
そうそう。 |
| 小池◆ |
ところが,例えば物凄く勉強したデザイナーがいて「この書体で外字はどこまで出ますか」,「ここは手動機でしょうから,現場では何級まで持っていますか」,「もしかしたら3級ぐらいまでお持ちではないかと思うのですが,そうだったら嬉しいんだけど」などという風に,写植屋さん・印刷屋さんに話したとき,それに即答できる営業の人間が,今業界全体で果たしていったい何人いるだろうかという次元の問題もあります。 |
| 横山▼ |
DTPでいえば,外字についてはバージョンアップにからんだいろいろな問題があって,自分たちが使っているフォントとコードの「環境」を,大げさないい方をすれば Macフォントの「歴史」の中に正確に位置づけることが必要です。もし制作物の内容について顧客と直接折衝するのが営業であるなら,クリエイティブのみならず営業も当然そこまで知っていなければならない。 |
| 小西● |
例えば図書館の司書で,本が嫌いでロクに書店に足も運ばないなどという存在は論外なんです。ホールの企画担当者なら,道を歩いていてもポスターや聞こえてくる音楽に注意するものですし,広報担当者なら,この世のあらゆる広報に興味をもって接する。本作りに関わる人間は,紙の縦目横目の問題から,書体デザイン,組版,製版,印刷,製本,流通・小売にいたる各現場に思いを馳せて,それぞれに敬意を表しつつ研鑽を積むべきなのではないか,というのが私の持論です。
「日本語の文字と組版を考える会」は,そういう意味で意義のある集りだと思います。会の催しも,着実に回数を重ねているようですが,具体的な内容をお教えください。 |
| 前田■ |
1996年12月にスタートさせたのですが,きっかけはデザイナーの鈴木一誌(すずき・ひとし)さんが、「ページネーション・マニュアル」を発表されたことです。府川さんの『組版原論』が出たときは,この分野の人間がそれぞれ孤独に読んで,そこに書かれていた「無智な編集者や莫迦なデザイナーと仕事をするくらいなら,昼寝をしていた方が良い」というくだりで溜飲を下げていたんですが,「ページネーション・マニュアル」をきっかけとして,96年の暮れに日本語の文字と組版を憂える有志が集まって徒党を組もうと(笑),討論し交流する場を作ったわけです。この3月に「文字コード」をテーマに第8回をやりますが,セミナーを開いてその記録を「会報」として出しています。
第1回目の鈴木さんによる「ページネーション・マニュアルの提起」を皮切りに,第2回目「DTPにおけるデジタル画像の扱い」笠井亨さん(2月),「現代組版の基礎知識」府川充男さん,鹿島康政さん,小池和夫さん(4月),「ワークフロー」(6月)、「組版ソフト総点検」(8月)、「特別セミナー 本が動く」杉浦康平さん(11月)と続き,昨年12月の鈴木さんと小池さん,私ほかによる「連続と切断」から2年目に入っています。
めざしたのは組版関係者ですが,参加者たちは自称他称のデザイナー,出版,編集,製版,印刷という各分野にまたがっています。毎回200人ぐらいの参加数で,名簿には1100人登録されています。2次会だけ熱心な人もいますが(笑)。 |
| 小西● |
現場の人が声を上げるのは良いことだし,問題を多く抱えている業界の風通しを良くすることにつながると思います。各現場での皆さんのますますのご健闘をお祈りします。今日は長時間ありがとうございました。
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40号(1998年5月号)から7回にわたって掲載いたしました座談会「コンピュータと印刷をめぐって」は,今年2月23日に収録したものです。その後,現在に至るまでの間に漢字コード問題などで新たな動きもみられました。そこで座談会参加者に98年10月末現在のコメントを各200字以内でお寄せいただくことにしました。以下に掲載します。(編集部)
◆記号,漢字合わせて約4700字を追加する「JIS拡張漢字」の公開レビューが11月から来年2月まで行われますが,その準備をせっせとやって,ようやくひと息ついたところです。インターネットのみでの公開ですが,できるだけ多くの人に関心を持ってほしいですね。http://jcs.aa.tufs.ac.jp/jcs/で公開されています。…………小池和夫
▲写植に対しても私たちは既製のフォント製品だけで満足していたわけではなかったし,DTPでも必要とあらばいつでも自前のツールやフォントを作り出していける態勢だけは常に準備しておきたいと思っています。それが電子組版の仕事をこなしていく上での我々の基本姿勢です。またDTPに固執してDTPのためのDTPをやっていく気も我々にはありません。なんなら活字や木版の工程にもアクセスする気構えでいたいと思います。…………府川充男
■感情的なデマゴギーとしての文藝家協会の「反JISキャンペーン」に対しては3月のセミナー、『ユリイカ』5月号と『技術と人間』8・9月号,及び『文藝』冬号における我々の反撃によって鎮静化させた。しかし,トロンのような技術万能論が蠢いている限り、「溺れた犬を撃て」という魯迅の教えは生きている。最近とくに思うことは,日本の印刷物で危機的状況にあるのは,文字よりもむしろ組版の方ではないか,ということだ。本当に解決しようと思えば,原稿用紙の書き方をはじめ,手書き文字を基本にした基礎教育が社会的になされなければならないと思う。…………前田年昭
▼DTPの世界ではまだ,すべてが過渡期という感じです。60年代の政治の世界では,過渡期世界論という時代を牽引したラディカリズムがありましたが,府川氏には篋底(きょうてい)深く秘した奥義を開示していただき,在るべき文字環境へと至る戦略とスタイルの教程たりうる過渡期文字世界論というのをぜひまとめてもらいたいですね。…………横山壽信
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