【第1回〜第7回のまとめ,各回ごとの簡単なまとめと全体として会がめ ざした方針について,当初の目標とくらべてどうであったかの検証。】の 討議のために(改)




2002年4月

(文責・前田年昭)


研究会は,広い意味での句読点(すべての区切り符号・繰り返し符号のほか,クワタなどの和字間隔類も含む)と句読法とを研究対象とした例会の開催・会報の発行,および各々の署名原稿による論文集の刊行をめざそうとした。ほぼ1年たった。例会は7回開催した。毎回十数人の参加があったが1回だけの参加者も多かった。当初の論文集の計画はその後進展がなく,3人の世話人のうち2人が退いた世話人会は解体した。

学問研究分野としては句読点研究はかならずしも確立していない。先行研究はほとんど存在しなかった。とりあえず,検討対象の分野をできるだけ広くとり,異なる分野から逆に照らし出す方法をとった(第5回まで)。
 松葉祥一さんに報告を求めた第2回「エクリチュールとしての句読点 デリダの議論から」は,フランス語のパンクチュエーションをかんがえることによって和文の句読点を見つめ,また音声言語と文字言語との関係を考察しようとした。境田稔信さんに報告を求めた第3回「近代国語辞書に見る句読点」は,句読法の草創期である「近代」を対象にすることで現代の句読法をかんがえ,辞書自身の明示的凡例をかんがえることによって暗黙の用法にゆだねられている句読法を照らし出そうとした。藤田眞作さんに報告を求めた第4回「縦組にとっての句読点 TeX組版からの見方」は,版面に組まれた場における句読点が,調節弁なのか,論理構造を示すものなのか,どちらの動機が強くつらぬかれているのかをみようとした。ぶら下げ読点の字幅ゼロという提案は検討に値する。板垣正義さんに演じていただいた第5回「朗読ライブ『句読点表現』」は,音声言語におけるさまざまな種類と階層の「間(ま)」をかんがえることによって,書かれた句読点をみようとした。ここであまりに拡散してゆくばかりなので,いったん収束させるべく,句読点の専著を多数著している大類雅敏さんを招いた第6回「わたしの句読点研究史」では,あらためて,当初の立場と観点であった社会と歴史の文脈における句読点研究はまだ端緒についたばかりであることを再認識した。

こうしたときに池田証寿さんに報告をいただいた第7回「なぜ日本語の書記の歴史なのか 小松英雄と藤枝晃とを手がかりに」(2002.02.17)は文字どおり,研究活動の目的と研究会のあり方,すなわち自分自身を問うものとなった。つまり,書記(表記)とは何か,言語と記号との連続/非連続,また会員と非会員の連続/非連続の結節点はどこにあるのか,世話人会とは何か,が正面から問われた。
 研究会では目的意識的に何を記録し何を遺すのかを追求しようとして,例会の感想や意見を「ニュース」としてまとめ6号まで出した。また,例会の資料などもウェブで公開した。各回に参加した人を会員とするという“開かれた会”としての研究会の持ち方は新しい出会いをもたらした。しかし,系統性と継続性においてはどうだったのか。それは実は研究会自らの方向がもつ必然の結果ではなかったのか。第1回例会討議で出された「編集・校正・組版・デザイン等,会員の仕事の現場に研究の足場を置く」という立場そのものが再検討される必要があるのではないか。“現場”をうちだした積極面には,句読点や句読法をどちらかというと軽視してきた既存のアカデミズムに対抗して新しいものを見つけていこうという意識が背景にあったとおもう。しかし,「仕事の現場に研究の足場を置く」と表現したときに,そこには一種のおごりはなかったのか。いや,そこまで言わなくても,新しい参加者が「編集・校正・組版・デザイン等」の日々の苦労やそこから困っていることの解決のノウハウを求め,それに「会」がこたえるという“錯覚”を生んできたのは自らがもたらした結果ではないか。私たちが,報告者の問題提起を学び例会で対話するおもしろさ,楽しさを感じるのは,むしろ「現場」自体を別の位置から対象化し,メタ化してかんがえ,自分の知らない,異質なものとふれあうときではなかったか,と今,おもうのである。

以上のようなことを,年初から募った「研究会のゆくえについて相談する寄り合い」に集った有志で話し合った。
 研究方法としての課題は,会員を固定するのかどうかということと世話人会をどうつくっていくのかということでもある。これは一面では,批評誌,同人誌をどう維持していくのかということと共通する課題でもあり,また他の一面では,学際的研究をどうつくりだしていくのかという課題でもある。有志で検討した結果,講師をまねいてこれまでのような公開の例会をもつのではなく,課題ごとのミニ研究会をいわば分科会として持っていくこと,このミニ研究会の情報は公開しておくこと,としたい。

研究対象としての課題では,順不同で列記すると以下の内容である。
 - 明治時代の活版以前の木版の歴史,訓点や蘭学の歴史を検討する
 - 書体に注目した書記の歴史を句読点との関係のなかで検討する
 - 「国語」の成立史における句読点の位置を検討する
 - 他言語との翻訳における句読点の置換の歴史と用法を検討する
 - 現代日本語書記における句読法の暗黙のルールを明示化し規準を検討する
 - 記号としての同一性とその用法の同一性とを区分して検討する
 - 表現のための記号としての句読点の歴史と用法を検討する
 - メディアのちがいにも着目したうえでの可読性の研究史を検討する

具体的に現在挙げられている分科会のテーマは以下の内容である。
 - キットラー『グラモフォン・フィルム・タイプライター』の読書会
  ……(説明)
 - 明治五年西伊豆拾圓札事件の研究会
  ……(説明)



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