|
スティーブン・スピルバーグが史上最高額でリメイク権を獲得した
究極の号泣ホラー『箪笥』
2004年7月
前 田 年 昭
『KOREA TODAY』2004年7月号 掲載
|
|
|
怨霊に取り憑かれた家に住む美しい姉妹を襲う世にも奇怪な出来事。韓国ではだれもが知っている古典の怪談「薔花紅蓮伝」をベースに描く,恐ろしくも切ない物語。スティーブン・スピルバーグが史上最高額でリメイク権を獲得した,究極の号泣ホラー――。
|
〔ストーリー〕
その扉は開けてはいけなかった |
ソウル郊外に静かにたたずむ一軒家。到着した車から,美しい姉妹が降り立った。長期入院を終えて帰ってきたふたりを継母が迎えるが,どこか冷ややかな表情をしていた。姉(イム・スジョン)は継母を毛嫌いし,妹(ムン・グニョン)は少し怯えていた。
その夜,妹は部屋に何ものかの気配を感じ,怖くなって姉のベッドにもぐりこんできた。妹を優しく抱き寄せる姉だったが,その姉が悪夢にうなされることになる。
この悪夢以来,家のあちらこちらで怪奇現象が連続して起きる。
すべての恐怖を支配するものは,妹の部屋に置かれた“箪笥”の中に,静かに封印されていたのだった…。
|
〔見どころ〕
ディープな“恐怖”って何? |
何が一番怖いかといえば,説明できず,正体も理由もわからない怖さだろう。その意味で,紹介文に「本当の恐怖は,忘れることも,消し去ることもできない,家族の哀しい記憶に巣食っている」という,この映画はホラーのツボをおさえたものである。安心して見ることのできるホラー(と言ってしまうと,ちょっと変だが)といえようか。
だがしかし,人々は何を求めてホラー映画を見るのだろうか。「圧倒的な恐怖を味わわせながらせつなさに涙させるまったく新しい未体験のホラー」という謳い文句が合っているかどうかは,見て恐怖を味わったうえでの判断に任せたいが。これは言ってみればハリウッド的なホラーである。韓国映画が元気なことはとっても嬉しいのだが,ハリウッドにも日本にもない韓国の伝統としての“恐怖”を描いてほしいというのは欲張りすぎか…。
余談であるが,イ・チャンドン監督の『ペパーミント・キャンディー』(一九九九年)は,純朴な青年が軍隊や警察の仕事のなかで手と心を汚していく二十年を,逆回しで見せてくれた名画だ。歴史のなかで犠牲になった人間の無念や執念が見るものに迫ってくる。また,映画ではないが,ファン・ソギョンの小説『客人[ソンニム]』(二〇〇三,二〇〇四邦訳=岩波書店刊)では,故郷への旅の途中,次々と亡霊たちが現れ,半世紀前,朝鮮半島で起きた凄惨な戦争の生々しい姿が明らかになる。
つまり,人間ほど不可思議なものはなく,この社会ほど怖いものはない,ということだろうか。そういう現実を直視する勇気を与えてくれるディープな映画こそ韓国映画の真骨頂ではなかったか。アメリカ中心のグローバリズムのなかで,“ハリウッドを真似たような”韓国映画が主流になっていってしまうと,韓流ブームも一過性のものに終わってしまわないか。
付け加えれば,主役の美しい姉妹と美しい継母をしのぐ圧倒的な存在感を示しているのが父親役のキム・ガプスだったこと。金大中事件を映画化した『KT』(阪本順治監督,二〇〇二年)の好演を思い出した。
〔キャスト〕
スミ(姉):イム・スジョン
スヨン(妹):ムン・グニョン
ウンジュ(継母):ヨム・ジョンア
ムヒョン(父親):キム・ガプス
〔スタッフ〕
監督・脚本:キム・ジウン
撮影:イ・モゲ
音楽:イ・ビョンウ
|
| (おわり)
|
Jump to
|
[Top Page] [BACK]
|
| ご意見をお待ちしております。 |
電子メールにてお寄せください。
前田年昭 MAEDA Toshiaki
[E-mail] tmaeda@linelabo.com |
|