JIS Z 8125(デジタル印刷用語)素案への私のコメント



2002年9月30日

前 田 年 昭
ライン・ラボ代表

社団法人日本印刷産業連合会
デジタル印刷用語標準化委員会委員長
高橋恭介様



前田年昭/組版業(有限会社ライン・ラボ)
〒162-0825東京都新宿区神楽坂6-73-101
電話03-5229-8044・FAX03-5229-8047
メールアドレス tmaeda@linelabo.com

意見:「並字」を採ってほしい。
理由:デジタル印刷現場で日常的につかわれている用語であること。また,とくに,隣接する職種同士の受け渡しにきわめて有効な用語であること。

 公開されたデジタル印刷用語 JIS Z 8125素案 Ver1.1【註1】の用語としては採られていない。用語採否のための各種辞典調査に中心になって尽力された小林敏さんは,私の質問に対して,議論はあったが定義しきらないので誤解されるおそれがあり危険だとおっしゃっておられた【註2】。しかし私は,使う文脈にさえ留意すればむしろ意思の伝達に有効で事故を防ぐ効果があると思う。
 そこで以下に,用語運用の「現場での有用性」を強調し,「用語の定義」を提案する。

(1)「並字」という用語の基本的で切実な有用性

 例を挙げる。同一の行中でひとつまたは二,三の文字のみ文字サイズが異なっていたときに,当該部分を指して「ナミ」と記号することで校正の指示をする。この場合,サイズを特定することなく,たとえば著者や編集者から組版者にサイズを揃えるようにとの意思を伝えることができる。そこには本づくりの現場におけるチーム内の他者への信頼がある。電算写植で中間級数が可能になってから,とりわけDTPでサイズ指定が中間値も含めて「自由」になったいま,異級数の混在を見分けられても,デザインによって字面率も異なる文字サイズを特定することはますます容易ではない。ゆえに,「ナミ」という指示で「並字」に復することを伝えることは,ますます有用であろう。

(2)「並字」という用語の定義への提案

 野村保惠さんは「並字」を次のように説明しておられる。
《並字 特殊でない普通の書体や大きさの文字。(1)ゴシック体に対して明朝体を,(2)平体・長体に対して正体を,(3)拗促音の右付き・下付き文字を普通の大きさの文字に,(4)イタリックに対して普通のローマンを,(5)ボールドに対してメジウムを指す。校正用の記号として“ナミ”を使う。》【註3】
 「説明」として言い尽くされていると私は考える。
 したがって,「定義」として以下のとおり提案したい。
《並字〔定義案〕 字素,文字,および文字列の各階層における属性に対する指定を,ひとつ上の階層における一般的な属性に揃え,また,復すること。》
 また,より理解を助けるためにあわせて「参考」欄に,さきの『編集校正小辞典』の説明を全文入れたらどうかと考え,提案とする。

 ご検討のほどよろしくお願いします。

【註1】
http://www.jfpi.or.jp/material/yougo/
jis/jis_degital_review_soan.pdf
【註2】
日本出版学会デジタル出版部会(9月24日,東京電機大学)の席上でのご発言
【註3】
野村さんの以下の労作の148ページ
『編集校正小辞典』1993年,ダヴィッド社,ISBN4-8048-0204-5
以 上 

[返答]

10月12日,デジタル印刷用語JIS化委員会の事務局を担当なさっている(社)日本印刷産業連合会の真田さまからメールをいただいた。
■件名 :
Re: [Fwd: 0930_JIS Z 8125素案公開レビューに対するコメント]

送信日時 :
2002年10月12日 13:48
有限会社ライン・ラボ
前田年昭 様
(社) 日本印刷産業連合会 真田と申します。
デジタル印刷用語JIS化委員会の事務局を担当しております。

この度は、デジタル印刷用語の公開レビューに対し、貴重なご意見をいただき有り難うございました。
10月10日(木)に、デジタル印刷用語委員会を開催し、頂いたメールを印刷して各委員に配布、「並字」の採用について討議をさせていただきました。
討議の結果、今回のJIS化では、校正指示は、「イキ」、「トル」、「送り」に限定することとなり、「並字」の採用は見送らさせていただきましたことをご連絡いたします。

ご意見をいただいたことに重ねて御礼申し上げるとともに今後とも(社) 日本印刷産業連合会の活動に対してご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

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