3月31日 カール=ビンディング/アルフレート=ホッヘ、森下直貴/佐野誠訳著『「生きるに値しない命」とは誰のことか ナチス安楽死思想の原典を読む』2001年11月、窓社。テキストの思想内容との対決としての批判的評注において、【〔…〕生存に関して「意志」以外に考慮すべきものは何もないと断定するのは、あまりにも狭量な考え方だと思われる。人類とは別種の動物界に目を転じれば、生きる意志/意思はないにせよ、生きんとする欲動ないしは努力(仮にこう表現しておく)に満ちていることを否定できまい。「意志/意思」の母体・背景・素地にあたる「欲動/努力」を無視する傾向を生み支えているのは、知性優位の人間観にすぎない。】とする森下は「欲動」から「意志」をどう位置づけるかについて【一点目は、「生きている価値」について云々できるのはあくまで「自己評価」の場合だけであって、「外部評価」は許されないということである。「生きている価値」を他者が外部から評価することと、意志のある人が自分で評価することとは決定的に異なる。〔……〕二点目は、本人による「存在の評価」に関して、個々人を取り巻く状況/事情の「違い」を考慮して、その多様性を認めることである。個別性への繊細な感受性をふまえた「場合分け」の思考が求められる。】と指摘している。
3月30日 ポール・ヴィリリオ、土屋進訳『情報エネルギー社会 現実空間の解体と速度が作り出す空間』2002年3月、新評論。ヴィリリオは科学原理主義の君臨によってニーチェの論理が反転する場に立ち会っているとして次のように書いている。【私たちはすでに一九世紀において、工作機械などの飛躍的な発展にともない、技術が労働者の筋肉力に置き換わる端緒に立ち会いはしなかっただろうか。/かつての工場労働者が「技術」による失業に直面したように、もうじきエネルギー効率の不十分さによって時代遅れと見なされた生体器官の強制失業に直面するのではないだろうか。/「プロレタリアート」の歴史がお払い箱になったのに続き、今度は器官内のナノテクノロジーによって旧式化した人間生理器官が排除され、廃棄されるのではないだろうか。/そしてまた、地上環境の人工化がますます強く要請され、汚染の破滅的な広がりによってかつてのような「大気生活」が続けられなくなる中で、私たちは新しいタイプの原理主義の誕生に立ち会うのではないだろうか。それは従来の信仰のように神への希望と結びついたものではない。新しい原理主義とは、自然に反した「科学技術信仰」であり、真の科学技術統合主義への信仰である。おそらくそれは宗教的狂信よりも激しい猛威を振るうだろう。また、無意識的な「科学の力への意志」は、今日ではまだ想像することもできない不寛容へとたどり着き、空間の特殊性(性、人種、宗教)を攻撃するだろう。そしてそれだけにはとどまらず、完成した過剰興奮人間が、半ば救世主のように立ち現れ、その出現によって決定的に失格の烙印を押された「自然な」生命力、生きものをも攻撃するだろう…。】。
3月29日 ▼『現代思想』2002年4月号(特集・教育の現在)に、矢部史郎「声明なき攻撃」。【一般に、現在の大学生は言葉を知らない。多くの学生たちが、積極的にであれ消極的にであれ、言葉の使用を拒否している。〔……〕何かを言葉で言い表すことが知的な活動と見なされていた時代は、ずいぶん以前に終わっている。何かを真摯に考えようとするならば、まず言葉を放棄しなければならない。言葉の濫用と背任があまりにも充満してしまっているために、学生は失語に陥っている。言葉を自在に駆使しなければならない大学という場所で、言葉から最も遠ざけられてしまっているのである。】とする矢部は【昨年九月二一日、私立大学連盟の五〇周年記念祝賀会は、黒いヘルメットをかぶった数十名の学生たちによって実力で破壊された。祝賀会の会場には、数百のペンキ玉が投げ込まれ、消火器が噴霧され、出席者は声をあげて踊った。文部科学省の役人と有名私大の総長、オリックス、日本IBM、その他大学に寄生するドナルドダックたちは、もれなくペンキを浴びせられ、最大の標的であった奥島孝康は演壇で立ち往生しながら体中にラクガキされた。】という事実をとりあげ、【これは、よい。/問題はここからだ。/こうした戦闘的な行動を組織しながら、しかし、学生たちは声明を出さなかった。言葉を駆使して大学を批判し、自らの正当性を訴えることを彼らはしなかった。〔…〕なぜなら、彼らもまた言葉を失った大学の中で、所在なくうろつくしかない者たちだからである。/〔……〕あらゆる場所で居ながらにして排除され、言葉の扱いを知らず、毎日を惨めな会話で満たしているのは、誰か。「イコール・フッティング」だのと横文字をたれる連中に、言葉にならない怒りを覚えているのは、誰か。無関心と無権利にさらされ、言葉のない闘争に突入しているというのは、いったい大学の話だろうか。/「声明なき攻撃」は、私たちの夢想に亀裂を入れました。ようこそ、現実の不毛世界へ。】と書いている。▼「韓国の声」のページ「韓国の声55号」02.03.26付に、「【特集】‘悪の枢軸’をめぐる虚と実−韓米首脳会談を検証する−」(康宗憲)、高銖春「【講演】21世紀を生きる私たち〜第38回韓青全国冬期講習会での講演〜」。
3月28日 リチャード・ピッチョート、ダニエル・ペイズナー、春日井晶子訳『9月11日の英雄たち 世界貿易センタービルに最後まで残った消防士の手記』2002年3月、早川書房、の巻末に吉岡忍「解説」。「遺族たちを訪ね歩いた」という吉岡は【何人も何人も訪ね、長い長い話を聞いているうちに、私はひとつのことに気がついた。遺族たちがけっして「報復」も「戦争」も口にしないことを、である。/言っておけば、このときテレビをつければ大統領が報復戦争を叫び、ビン・ラディンを捕まえると豪語し、ニュースの記者たちはきそって特殊部隊と最新兵器の優秀さを解説していた。アメリカ国内のあちこちでアラブ系移民者への迫害がはじまっていて、すでに数人が殺害されていた。/遺族のひとりは言った。ええ、もちろんアフガニスタン人全部が死んでしまえばいいと思うことはあります。でも、朝、目が覚めると、昨日はどうしてそんなことを考えたのだろうと自己嫌悪に陥るんです。こんな辛い不幸は私たちだけで十分なのに。アメリカ人もアフガニスタンの人もイスラム教徒も、こんなひどい目に遭うべきじゃないんです。/この話を聞いてから、私はテレビや新聞で今回のテロ問題を語っている人物たちを見るたびに、この人物はあの日あの瞬間、どこにいたのか、と考えるようになった。体験した人々が登場することはめったになかったが、少なくともこの出来事を内側から理解しようとしているのか、それとも外側からの理解に過ぎないのかだけは見分けられるようになった。外側から理解しただけの連中は「報復」と「戦争」を口にする。内側をくぐり抜けた人々はけっしてそうは言わない。/燃えさかり、やがて崩壊していく世界貿易センターに飛び込んでいった著者がどちらであるか、読者はもうご存知だろう。リアリティーは人間を謙虚に、控えめに、そして、何より人間的にするものである。】と書いている。
3月27日 ▼「民主労総が発電労組に連帯してゼネスト突入を決める」(レイバーネットのページ)。【民主労総は3月26日、緊急非常代議員大会を開き、「国家基幹産業の私有化阻止と労働運動弾圧粉砕のためのゼネスト闘争」を決議した。〔…〕】。▼字游工房のページ(もじマガ)に「参考資料の棚」。【私たちが書体制作をするにあたって,教えられたり,参考にしたり,励まされたり,考えさせられたりした書籍や雑誌や記事】として手始めに、今井直一著『書物と活字』1949 印刷学会出版部、中村征宏著『文字をつくる 新技法シリーズ』1977 美術出版社、『文字 イメージの冒険3』1978 河出書房新社、小宮山博史著『LETTERING』2001 書肆絵と本、佐藤敬之輔著『ひらがな 上 文字のデザインシリーズ2』1964 丸善株式会社、今田欣一著『タイプフェイス・デザイン事始』2000 欣喜堂、府川充男撰著『組版原論 タイポグラフィと活字・写植・DTP』1996 太田出版、文化庁文化部国語課『明朝体活字字形一覧 漢字字体関係参考資料集』1999 大蔵省印刷局、矢作勝美著『明朝活字 その歴史と現状』1976 平凡社、『字の匠 Historical Tour of Typography/Adobe Indesign 付属ブックレット』2001 アドビシステムズ株式会社、――の10冊を紹介(02.03.15現在)。▼「金の活字賞:“世界で最も美しい本”は和紙紹介の本」(毎日新聞02.03.23)。
3月26日 憲法違反の人権擁護法案反対! 「人権擁護法案:緊急・公開シンポ開く メディア関係者らが参加」(毎日INTERACTIVE 02.03.25)、【取材・報道活動に対する政府介入を招く危険性が懸念されている「人権擁護法案」の問題点を考える緊急・公開シンポジウム(日本新聞協会、民放連、NHK主催)が25日、東京・平河町で開かれた。メディア関係者や市民ら約220人が参加した。/パネリストの一人、毎日新聞東京本社社会部の小川一副部長は「メディアは、人権侵害を受けている人の立場に立って報道してきたのに法律で加害者に位置づけられたのは悔しい」とした上で「(法案化の過程で)公権力による人権侵害への規制が弱くなったのは腹立たしい。この法律と個人情報保護法ができると取材がやりにくくなる。それで笑うのはだれかを考えると恐ろしい」と話した。〔…〕】。「メディア規制に反対相次ぐ 人権擁護法案緊急シンポ」(河北新報ニュース02.03.25)、【〔…〕人権政策を提言する「人権フォーラム21」事務局長の山崎公士・新潟大教授は「メディアによる被害を公権力が取り扱う国はほかにない」と規制対象から外すよう求めた。/「報道被害救済弁護士ネットワーク」代表の坂井真弁護士も「権力の報道干渉に道を開く法案を認めるべきではない」と指摘。法務省が「過剰取材などに限定した」という規制対象についても「広がるように読める条文になっており危険」と懸念を示した。】。関連:読書録02.03.08付。
3月25日 在日韓国民主統一連合(韓統連)大阪本部のページ(焦点)に「大統領は日本総督なのか?」(02.03.23)。【小泉日本総理の訪韓を反対するデモが、連日続いている。/22日、大統領府近隣では、21日のチョンモ決議大会に続き、「投資協定・WTO反対国民行動」と「全国民主連帯」主催で「3・22金大中大統領・小泉韓日投資協定公式署名反対緊急行動」が進行された。/この日、集会参加者は、経済支配を踏み台に軍事大国化を推進する日本に対する憂慮を表明。その一環として推進される小泉訪韓と韓日投資協定締結を反対するという立場を明らかにした。/大会辞を通じて、オ・ジョンヨル・全国連合常任議長は「小泉総理がワールドカップという華麗な包装紙に包み、韓日投資協定という毒薬を持ってきた」としながら、「小泉は、自衛隊海外派兵と神社参拝など、日本の軍事大国化を率先して推進している中曽根以後、最も深刻な極右主義者だ」と糾弾した。/また、オ常任議長は「日本が軍事大国化になった時、最も被害を蒙るのは、まさに私たち民族」とし、「国を救うために、私たちが立ち上がるべきであり、あなた方に期待するところが大きい」と参加者を督励した。〔……〕「新社会連帯」・イ・チャンス代表が朗読した決議文で、参加者は「韓日投資協定の内容が、公式署名当日になっても公開されないでいる」としながら、「それは、その内容が国家経済を危機に追い詰め、労働者の基本権まで弾圧することであるためだ」と主張した。/参加者は▲投機性資本の規制不能▲労働圏弾圧▲国家基幹産業の私有化と海外売却などを招く、韓日投資協定公式署名を即刻中断することを促して、実務者を通じて決議文を大統領府民願室に接収させた。〔…〕(統一ニュース 3/22 翻訳:韓統連大阪本部)】。
3月24日 「国際シンポジウム“Between War and Media”集中討議:戦争とメディア」、2002年3月25日〜27日(時刻は上記リンクのプログラムを参照)、日仏会館ホール、入場無料・同時通訳付き・先着順(定員150名)申し込み不要、主催:日仏会館,戦争とメディアシンポジウム実行委員会/共催:東京大学社会情報研究所/助成:国際交流基金,在日フランス大使館,フランス国立高等研究院。【20世紀は戦争の世紀であった。2つの世界大戦からベトナム戦争や世紀末の湾岸戦争に至るまで,戦争は20世紀という時代を縁取る輪郭をなしてきた。そして,映画やラジオ,ポスターや新聞の写真報道からテレビ,近年の衛星通信やインターネット,湾岸戦争での情報の徹底した操作まで,戦争をめぐるこの世紀の欲望や意識,記憶は,同時代のメディアと広く,深く結びついてきた。他方,メディアの側からみても,20世紀におけるメディアの発達にとって戦争は革命的な契機をなしてきた。メディアの世紀としての20世紀と戦争の世紀としての20世紀は,相互に不可分に絡まり合ってきたのである。/〔……〕今,わたしたちは,そうした戦争とメディアが結合した究極的な形態を,21世紀のとば口で目撃している。いや,すでにわたしたちはその「戦時下の人びと」となっているのかもしれない。2001年9月11日の出来事に端を発し,現在,「アフガン報復戦争」の成り行きを,大方の人びとは,CNNやアルジャジーラなどのトランスナショナルな衛星メディアを介することで知っているし,またそうすることではじめてこの「戦争」について表象できている。それどころか,そもそも9月11日の出来事は,最初からテレビカメラに撮られることを前提に計画され,「演出」されていたことは明らかである。すべてがメディアの中にありながら,三千人の命が一瞬のうちに失われた。/始まった「戦争」の帰趨はいまだ明瞭ではない。この「戦争」が世界規模での戦争となってしまうにしろ,それともこれまで予想できなかった新たな様相が開けてくるにしろ,いずれにしろそこでは,メディアがわたしたちの世界認識の本質的な構成条件となっていることは間違いない。戦争は,つねに異様な出来事として,わたしたちを新たな認識と知覚の地平に引きずり出してしまう。だがこの知覚の地平そのものに,メディアはますます不可避的にかかわるようになっているのだ。/それだけではない。世界貿易センタービルに対する攻撃の後,瓦礫の山と化した現場を中心にして,ある弔いの形が広がっている。マンハッタンは突然「戦場」として語られはじめ,そこでの死者たちはアメリカの無垢な死者として,英雄的な戦死者として,無数の星条旗に飾りたてられている。高層ビルに突入する航空機の映像は,かつてのケネディ狙撃やチャレンジャー号爆発事故のシーンと同じように,いやそれらを凌駕する緊張度において,アメリカの記憶,ナショナルな図像となった。こうした「テロの記憶」,「戦争の記憶」は,新しい集合的記憶として生み出され,操作され,根を張り始めている。肉親や恋人を失った人びとの真正な悲しみと,それをナショナルな顕彰記念行為の技法へと水路づけようとする作用とがせめぎ合い,そこに出来事のパブリック・メモリーが作られようとしている。しかし,そうした喪のかたちが,同時にまた,別の死者たちに対する深い文化的忘却ともなるということに,人びとはどれだけ細心でいられるだろうか。〔…〕】。
3月23日 『沖縄タイムス』02.03.22夕刊に「武力攻撃事態法に反対声明/「基本的人権を侵害」、沖縄弁護士会」。【沖縄弁護士会(当山尚幸会長)は二十二日、県庁で会見し、政府が四月上旬をめどに国会への提出を予定している「武力攻撃事態におけるわが国の平和および安全確保関連法案」(仮称)に反対する会長声明を出した。近く小泉純一郎首相や外相、防衛庁長官に送付する。/声明では「同法案は『武力攻撃事態』を理由に、私有財産の徴発や役務の徴用、諸活動の規制など、国民の基本的人権を必要以上に制限、侵害していく恐れがある」と問題点を指摘。「法案の内容を広く開示し、国民が検討し意見を陳述する機会を与えるべきだ」と提言している。/当山会長は「基地を抱える沖縄には、今も多くの人権問題が起きており、同法案は現状を悪化させる危険性がある。国民の知らぬ間に成立するようなやり方は拙速に過ぎる」と述べ、国に慎重な検討を求めた。〔…〕】。関連:→「武力攻撃事態法の骨格判明 政府、20日に与党に提示」(02.03.20河北新報)。
3月22日 ▼訃報:阿波根昌鴻(3月21日)享年101、合掌!→毎日02.03.21【〔…〕沖縄本島北部の上本部村(現本部町)生まれ。1925年に移民としてキューバ、ペルーに渡ったが34年に帰国し伊江島に移り住んだ。同島に農民学校をつくる計画をたてたが、沖縄戦に突入し、自分の学校の教師にさせるつもりだった一人息子を失った。戦後の53年に米軍が突然島に上陸し、農地を「銃剣とブルドーザー」で強制収用。本島各地を島民とめぐり歩いて実情を訴えた「乞食行進」など常に土地闘争の先頭に立ち、一貫して軍用地としての土地契約を拒否し続けた。/84年には「命こそ宝」の意味の反戦資料館「ヌチドゥタカラの家」を建て、米軍が演習で使った模擬原子爆弾や砲弾、薬莢(きょう)などを展示している。/97年7月3日に宜野湾市内で開かれた県収用委員会の公開審理では、阿波根さんが16ミリフィルムで伊江島補助飛行場に強制収用された土地への熱い思いを語りかけた。最近は高齢でほとんど寝たきりで、先月から胆のう炎で入院していた。/著書に「米軍と農民―沖縄県伊江島」「命こそ宝―沖縄反戦の心」(いずれも岩波書店)などがある。】。〔02.04.17追記〕→「今月の人 平和市民連絡会」。▼02.03.04付読書録既報の国立歴史民俗博物館創設20周年記念展示「古代日本 文字のある風景〜金印から正倉院文書まで〜」の『図録』(A4判218ページ、2002年3月、編集・国立歴史民俗博物館、発行・朝日新聞社)。【奈良時代、律令国家は、公的な機関である「写経所」(その時々で呼称が変わる)を設けて、大量の経典を写経させていた。/〔……〕まず経師たちの仕事〔…〕作業量については、宝亀三、四(七七二、七七三)年の場合がある程度知られる。それによると、筆の早い経師で一日に五九〇〇字程度、おそいものでも二三〇〇字ぐらい、平均して一日に三七〇〇字ほどを写していたらしい。奈良朝写経の謹直な字体で、長期間作業を続けていたことを思い浮かべると、かなりたいへんな労働であったと想像される。〔……〕/この写経事業に従事した校生は七人で、初校と再校の二回行われた。校生は、初校専門、再校専門に分かれてはいなかった。〔…〕史料によると、校生たちの一日あたりの校正紙数は平均して約二三〇張であった。一張には、一行一七字二五行として四二五字程度が書かれている。そうすると、これは四〇〇字詰め原稿用紙約二五〇枚程度になり、かなりの作業量であることがわかる。/このように、校正は相当なスピードで行われたらしいが、校正で誤りが見つかるとペナルティーが科されることになっていた。〔…〕初校の時に見つけられた経師の書写ミスに対するペナルティーと、再校の時に見つけられた初校の校正ミスに対するペナルティーとが定められている〔…〕。】。本当だろうか、この過酷さはすごすぎる!
3月21日 ▼JAGATのページに「2001年の印刷産業を振返る」(02.03.20)。▼承前、インタビュー・中村哲「1月に現地入りした体験をもとに現地とNGOにまつわる「復興」の真実を語る」。【「〔…〕私たちも、これからカーブルにNGOやODAがどっと押し寄せてくるだろうから、今年度で診療所を五ヵ所閉鎖して、もっと困った地域へ移す予定だったんです。ところが、住民が『とんでもない! 今出ていかないでくれ』と言うわけです。こんなにたくさんのNGOがきて、オフィスもいっぱいできて、そのおかげでウチの家賃も十倍になって、安いところへ移らざるをえなかったのに。よくよく聞いてみると、できたのはオフィスばかりで実際の活動はほとんどないんですね。カーブル市内でさえ、まともな医療行為が行なわれていない状況なんです。〔……〕日本では、NGOと言うと、なんか政府ができないようなことをする善い団体というイメージがありますが、現地の人はみんな、NGOというのは一種の詐欺師の団体であると(笑)、思ってるんですよ。〔……〕やってることがとぼけてるからですよ。例えば、具体的なことで言いますとね、西欧的な価値観だけで考えて、これだけ病気が流行るのはアフガニスタンの農村に便所がないせいだと、便所を作って清潔にすれば病気が減るというんで、ある国際団体が便所を作る運動を始める。この地区に便所を一〇〇ヵ所とか決めて作るわけですね。請け負った現地の人間は、そんなもの要らないのにと思いながら、まあ作らないとお給料がもらえませんから、しょうがなく作るわけですよ。ところが、なんにもない砂漠の真ん中に便所を作ったりね(笑)、しかも、昔の日本もそうでしたけど、農村では人糞っていうのは貴重な肥料なんですね。アフガンでは地中に埋めるという習慣はないんです。けれど、そのへんのことも斟酌せずに、西欧的な感覚で、こうしたら清潔になって病気が減るだとか言って、やってしまうわけです」】。
3月20日 ▼韓統連中央のページ(ホットニュース)に「統一連帯、結成1周年を契機に一層力強く前進しよう」(統一ニュース02.03.16)。▼承前、インタビュー・中村哲「1月に現地入りした体験をもとに現地とNGOにまつわる「復興」の真実を語る」。「今回のアフガニスタンに対する行動の欧米の根拠というのは、アフガニスタンという「失敗国家」をどうにかしなきゃいけないんだという、そういう価値観でしたよね」との問いに中村は【「ええ。やっぱりそれは人間としての礼を欠くと思いますね。この何十年かの混乱というのは、別にアフガニスタンの人が自分たちで作ったことじゃないんですね。ソ連が勝手に入ってきて、アメリカが勝手に入ってきて、そうやってグチャグチャになっていったわけですよね。これは私は腑に落ちないです。先進国の人にはアフガニスタンのことを遅れてると言う人もいますけども、我々の社会自体だって矛盾だとか悩みを抱えてるわけで。なのに理不尽に介入してきて、自分たちとは違ったものを排除する形でやっていくというのは、ちょっと紳士的じゃないという気がします。例えば、インド人が、アメリカ人は牛を食べてるから野蛮な国だって攻め込むというのとほとんど変わらないじゃないですか。でも、そんなことは実際には起こらないわけでね、当たり前の話ですけど、その土地その土地の文化というのがあるんですよ。やっぱり人が尊敬したり大事にしてるものを簡単に否定したりするんじゃないと思います。それに第一、ある意味、今の大旱魃というのは地球温暖化が原因なわけですから、いわゆる先進国の皺寄せをアフガニスタンが被っているとも言えて。ですから、文化の違いを論じる前に、共通して取り組まなくちゃいけない大事なことがあるような気がするんですよね」】と述べている。
3月19日 ▼『河北新報』3月18日付に「死刑廃止法案を検討 代替刑に終身刑導入を」。▼辺見庸「反時代のパンセ 連載第31回 戦争(6)」〔『サンデー毎日』2002年3月31日号所収〕。谷川俊太郎の「たんか」という詩をひいて、【「こえにだしてよんでみると、いみはよくわからなくても、きもちがいい」というのが気持ち悪いので、引いてみたのである。思い過ごしであろうか、私にはこれが脅しのように聞こえてくる。】として、【発声したい者は独りでそうすればいいのであり、黙したい者に発声を強いてはならない。教育委員会のように強圧的に命じてはならないし、冒頭の詩の作者のように猫なで声で強いてもいけない。沈黙も発声と同等の大事な表現なのだから。】と指摘する辺見は、次のように書いている。【無口でとても気の弱い友人の中学教諭が、卒業・入学式を前に、独り衝動的に学校長に会いにいき、緊張でぶるぶる震えながら「“君が代”は歌う自由も歌わない自由もあると生徒たちにいってやってください」と申し入れたのだそうだ。校長は満面笑みをたたえ、しかし、瞳は少しも笑わずに応じたという。「みんなで歌うという気持ちが大切です。みんなで歌う感動を生徒たちに教えてやってください」。友人の気合い負けだったようだが、私は彼の勇気を尊いと思う。この種の発声は群れてやるより、つまり唱和するより、へどもどしながらも独りですることで、発声主体としてはなにがしか得心するものがあるものなのではなかろうか。惨めでひどくつらくはあるけれども。/学校では教員が校長の意向に沿うているかどうかを待遇に反映させる人事考課制度が導入されようとしており、「思想および良心の自由」も「表現の自由」もほぼ根こそぎ奪われつつある。見た眼は谷川俊太郎の詩のように優しく、何気ないのだけれど、この国のどの領域よりも早く不可視の戦争構造を完成しつつあるのが、教育現場といえるかもしれない。楯突く教員らは次から次へと処分されており、組合は日に日に反発力を失っている。そこでは「いみはよくわからなくても、きもちがいい」ことと「みんなで歌う感動」が、澄明で無臭のゼリーのように、先生たちの心と毛穴を塞いでいる。ウンベルト・エーコのいう永遠のファシズムはここにもある。/校外ではいま、悪徳政治家ムネオ叩きが頂点に達しつつあり、まことに同慶の至りではある。戦争狂ブッシュの国会演説では野次一つ飛ばさず静聴した野党が妙に勢いづいて、とりわけ社民党のあの女史などはまるで鬼の首でもとったかのようにテレビその他で大はしゃぎ。マスコミはマスコミでなにを書いても大丈夫とわかるや、ムネオにさんざ呑まされ食わされした記者たちをふくめ一斉に薄汚れた手のひら返して、まあ、これでもかこれでもかと叩くこと叩くこと。しかし、何年も前からわかりきっていたことを、かつては書かず、いまになってみんなで一斉に報じる謎と恥にちては触れずじまいなのだ。「みんなで叩く感動」と「いみはよくわからなくても、きもちがいい」ことがここにも横溢している。よく見ると、ファシズムが裏返っている。】。
3月18日 ▼科学と技術の諸相のページ(気になるニュース)に吉田伸夫「コペンハーゲンの真実」(02.03.13)。▼新社会党中央執行委員会「新社会党綱領『21世紀宣言(案)』」(2002.1.19)。▼『SIGHT』Vol.11(2002年4月、ロッキング・オン)が「アメリカの終わりの始まり」を特集し、インタビュー・中村哲「1月に現地入りした体験をもとに現地とNGOにまつわる「復興」の真実を語る」。暫定政権は現地でどう捉えられているのかとの問いに【「そうですねえ、まあ、一般の人たちにとっては雲の上の出来事だというのが実態でしょうね。もう少し言えば、アフガン人っていうのは非常に独立性の強い国民で、今まで外国軍に擁立されて続いた政権はないんですね。その意味で、今回は英米の軍事力を背景に成立したわけですから、強烈な拒絶反応をもって迎えられてるというのが、普通の人の感覚ですね。それに、今流されているえいぞうだとかニュースだとかは、すべてカーブルあるいはその近辺だけですよね。だから、アフガン全体の実態としては、ほとんど無政府状態ということですね。〔…〕語弊はありますが、農村の基本構造は変わらずに上澄みが動いているという認識でしょうね。ただ、上澄みが動くにしてもタリバーンのほうがまだよかったというのが一般的な認識なんですね。少なくとも治安でどうこうという問題はなかったですから。〔…〕じゃあそれでパシュトゥーン対反パシュトゥーンというような図式で括れるかというと、これがまた複雑でして、ユーゴスラビアのような民族対立とはまた違う部族対立なんですよ。〔…〕家に帰れば、タリバーンも反タリバーンもなく、一緒に仲良くご飯を食べて、暮らしてるんですよ。こういうふうにアフガニスタンというのは、地縁・血縁での結びつきというのを非常に大事にしていて、早く言えば、タリバーン・反タリバーンなんていうのは八百長なんですよ(笑)。〔…〕表に出る大義名分としては共産主義だとか自由主義だとかデモクラシーだとか言いますけども、実際にアフガン社会を動かしているのは地縁・血縁なんですよね」】。
3月17日 ▼「【抗議要請】台東区は野宿者の最後の仕事を奪うな!」(aml 26879)。▼「鈴木宗男疑惑と「北方領土」問題 「『四島返還』を放棄して国益を売り渡した」論に組することはできない」(かけはし02.03.18号)。▼韓国の発電労組ストライキに関して、レイバーネットのページに「労働界の緊張が高揚、来週が分水嶺」(ソウル/連合ニュース)。【最近、長期化している発電労組ストライキに関し、政府が強硬対応方針を相次いで明言し、民主労総も来る23日までに対話を通した事態解決がなされなければ、第二の連帯スト突入を宣言する等、緊張感が高まっている。/また、韓国水力原子力労組が来る18〜19日に発電労組との連帯ストライキの賛否投票を実施し、来る20〜22日にはソウル地下鉄公社労組の新任執行部選挙が開かれて『剛性』労組発足にともなうストライキ突入の可能性が大きくなる等、来週から今月末までが今年の春闘の分水嶺になる展望だ。/△労働界緊張高揚=先月25日に始まった発電労組のストライキが長期化しているが、政府は強硬対応方針を、労組は連帯スト辞さずと宣言する等、一触即発の局面を迎えている。/発電産業労使は、交渉中断から8日後の去る12日夜、交渉を再開したが、核心争点である民営化に対する立場の差で決裂したのに続き、13日の夜に開いた交渉も、代表団構成問題で中断する等、対話による合意が難航している。/さらに、ストライキ18日目の14日には、交渉が中断したまま政府が対国民声明を通して民営化の強力な推進とストライキに対する強硬対応方針などを再び明らかにしたことに対し、民主労総も記者会見を開き、「政府が23日までに対話による事態解決に積極的に乗り出さなければ、第二の連帯ストに立ち上がる」と宣言、極限対立状況に駆け上がっている。〔……〕△展望=発電ストライキに関しては、政府及び使用側と労組側の対立が続く様相を帯びていて、長期化する可能性が大きい。/特に政府は「これ以上引き延ばす必要はない」として代替人材の投入と新規人材採用、対国民節電運動展開など、ストライキの長期化に対応した方案を推進中だが、民主労総は内部調律を経て他の公企業や金属労連などとの第二次連帯ストの準備に入る等、対話による事態の早期解決を期待するのが難しい実情だ。〔…〕】。
3月16日 ▼『河北新報』02.03.15付に「人権擁護法案に反対決議 「独立性なし」と日弁連」。▼帝国データバンク(倒産速報&集計)のページに、「全国企業倒産集計2002年2月報」。【倒産1712件、2ヵ月連続の前年同月比増加で増加率は2ケタの高水準。2月としては初めて1700件を超え、2ヵ月連続してその月としての戦後最悪を記録した。これは、基幹産業である製造業の倒産多発が、他業種の倒産を招いているためで、不況を背景とした倒産増加傾向が顕著となっている。2001年度の年間合計は2万件を超え、戦後最悪(84年度、2万363件)に迫る見込み。〔…〕】と件数・負債の集計と分析を示したうえで「今後の問題点」として【〔…〕建設資材関連、機械関連、電機関連のメーカーのなかで、中国との競争などで受注を奪われて脱落していく中小零細企業が依然として増えており、不況型倒産は75.4%を占めて10ヵ月連続して75%を超えた。また業歴30年以上の老舗倒産は27.7%と過去最悪を記録、過剰債務下の売り上げ不振、得意先の倒産により焦げ付きも発生して行き詰まるなど、厳しいデフレ環境に対応できずに淘汰されていく老舗企業が増えている。負債規模の大きい問題企業が法的処理されていく一方で、地場有力企業が系列関係の解消で行き詰まったり、地元金融機関の破綻の影響をまともに受けて事業継続を断念したり、特別保証制度の副作用で倒産する企業も著増するなど、規模の大小に拘わらず倒産が増えている。特に3月決算を控えて、業績不振、過剰債務、資金繰りに苦しむ企業に注がれる視線はさらに厳しさを増しているため、2001年度の倒産は2万件を超えて、戦後最高である84年度の2万363件近くに迫ることは確実である。】と指摘している。
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