読書録 2000年3月前半(敬称略)

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  • 3月15日 「独行法反対首都圏ネットワーク」のページに「ニュージーランドの行財政改革はニュージーランドに何をもたらしたか」〔…1月20日の夜、山上会館会議室において、元オタゴ大学教員の河内洋佑さんをお招きし、ニュージーランドにおける行財政改革についての学習会が開かれました。ニュージーランドでは、市場原理をほとんど極限まで推し進めたような『改革』が進行しました。その前後の状況を長年現場で見てこられた河内さんのお話は生々しく、独立行政法人化の問題をはじめ、これから日本が向かおうとしている先に何が待ち受けているのかを考える上で、非常に参考になる内容でした。会場は参加者でいっぱいになり、予定の時間を超えて活発な質議応答がおこなわれました。以下に講演の概要を紹介します。〕、「東大で「国立大学法人制度研究会」発足」〔東京大学において、総長の元に「国立大学法人制度研究会」が近日中に発足。・メンバーとしては専門家集団で少数。 ・任務は以下の2つ。1)「通則法+特例法」での大学への可否を検討し、骨子を作る 2) 1)がダメな場合、別途の法人制度を検討し、骨子を作る ・検討のスケジュールは、3月中に議論をスタートし、4月中、遅くとも5月連休明けには結論を得る、としている。 ・議論のベースとしては、昨年10月に出た「東京大学の経営に関する懇談会」最終報告、本年1月の「東京大学の設置形態に関する検討会」における2つのWG(理想形態WG、比較検討WG)報告の3文書があり、これに基づいて議論を詰めると考えられる。〕。読書録関連記事:国立大学独立行政法人化の諸問題(3月9日付)

  • 3月14日 室井尚「Virtual Time Garden」のページに、室井尚「文化工学の可能性―サイバースペースと文化」。【インターネットを新しい「道具」として捉え、現存のシステムにおけるその「利用法」を考えるというような議論】を批判し【ひとつだけ強調しておきたいのは、インターネットと共にわれわれは「ものの経済」から「情報の経済」へと移りつつあるということ】とする室井は【基本的にものの価値は希少性によって成り立っている。…これまでの資本主義経済はこのようにモノの希少性と所有の不均衡に基づいて成立してた。……ところが、情報の価値はむしろ共有されることから生まれるのである。…情報は共有されることによってさまざまな新しいアイディアや創発を生みだしていくのであり、その価値は専有ではなく共有によって作られる。…移行期である現在において重要なのは情報の経済にふさわしい土壌を作り上げていくことなのである。……アイディアの種子を誰かが投げ、別の誰かがそれに批判的な検討を加え、さらに別の誰かがそれを違ったアイディアと結びつけていく−−こうした開かれた編集的プロセスの中でこそ情報はその本来の価値を作り出す力を発揮する。…コンピュータが実現したコミュニケーション空間は、物質と非物質、ヴァーチャルな情報空間とリアルな空間の相互浸透を実現し、新しい人間と社会のデザインを作り出しつつある。しかしながら、そこには同時にコミュニケーションに関わるきわめて古い問題が隠されているのである。】と提起し、【結局のところ、人間は記号のコードを通してしか世界と触れあうことができない。それらのコードを通して、孤独で死すべき人生を「意味」あるものとして生きるのが人間の宿命である。その記号のコードがインフレーションを起こして、人間のメモリー容量の限界を超えるようになったのはこの百年ほどのことである。そのことはわれわれが世界をうまく体験することができないという危機をもたらす。しばらくの間は規格化されたマスメディアや国家という権力装置がその役割を果たしてきた。だが、それがもはやうまく機能しなくなってきたときに現れたのがコンピュータやハイパーメディアといった新しい装置にほかならない。したがって、その可能性を引き出すのは、われわれ自身の生の意味の回復にほかならない。サイバースペースを時間的で、生きられた場に作り変えていくことは、その意味できわめて重要な試みなのである。】とむすんでいる。

  • 3月13日 ▼ビル・トッテン「米国好景気の虚構」(2000年3月9日付)は【経済成長にありながら飢餓の蔓延に歯止めがかからないのは近代史上初めてのことだと語るのは、タフツ大学の飢餓および貧困センターの局長、ラリー・ブラウンである。「過去最長の景気拡大期の真っ只中にありながら、3,000万人以上の米国人が飢餓と食糧不足を経験している。この数字は4年前と変わっていない」とブラウンは続ける。労働力の構成および福祉政策の変化にその原因の一端がある。労働者の約20〜30%は収入が少ないために家賃、医療費、食費の中で何を削るか選択を迫られる。最低賃金がインフレ上昇率に追いつかず、なおかつ多くの企業が手当てを削減している。また同時に、過去数年間に貧困者の数は200万人しか減少していないにもかかわらず、福祉や食料切符政策の変更によって食料切符の受給者数は約850万人削減された。飢餓は特に子供に多く見られ、全体では7.2%が食料不足の状態であるのに対し、子供のいる家庭の飢餓の割合は15.2%、さらに6歳未満の子供がいる家庭では16.3%と高くなっている。】。▼田中宇「飢餓と食べすぎが12億人ずついる地球」(2000年1月27日付)は【世界の人々のうち、12億人が貧困のため栄養不足に陥っている一方で、別の12億人は食べすぎの状態にある・・・こんなレポートがアメリカで発表された。「ワールドウォッチ」というNGOが、世界中のいろいろな研究調査機関による、人々の栄養状態に関する報告書をまとめて作った「State of the World 2000」というレポートである。それによると、アメリカでは国民の55%が太りすぎの状態にあり、……中国では過去3年間で、肥満の割合が国民の9%から15%にまで増えた。……栄養不足の人が世界で12億人というのは、過去最大の数である。また、栄養不足の状態で生まれてくる発展途上国の子供たちの8割は、国全体でみると食糧が余っている状態の国で生まれている。つまり栄養失調になる原因は、食料不足が起きているからではなく、貧富の差が縮まらず貧困であるためということになる。】

  • 3月12日 文化通信(オンラインコラム)のページに星野「古本屋さんと出版社?」(3月10日付)。【講談社、小学館、集英社などコミックスを発行する大手出版社が、本の卸会社・取次に「不正返品」の是正を求める申し入れを行った。ほとんどの本が返品自由な取引である出版界で、出版社が返品についてこれほど厳しい措置を執るのは、おそらく初めてだろう。しかし、そうした「不正返品」の現物を見て納得した。講談社の『金田一少年の事件簿』かと思って開くと中身は全く別の出版社のコミックだったり、よく見るとマンガ喫茶のスタンプを削り取った跡があったりと、意図的な不正が明らかな返品がある。……推測すれば、こうした返品は一度マンガ喫茶で貸し出されたモノが、どこかの書店から返品されたと考えることが出来る。返品すると書店には新刊時の卸値と同金額が還ってくるから、マンガ喫茶と書店が結託すればタダでやれるということになる。これはもう犯罪といえるだろう。……さらに、最近は新刊書店が古書買取・販売を行うケースが増えている。……ブックオフの出現以来、古書に対して出版社や新刊書店が強い警戒感を持っている。確かに、いくら古書で売り買いされても、書店や出版社、そして著者には1文も入ってこない。産業としての再生産がない消費行為だからだ。……不況の出版界に降ってわいたような古書問題。果たしてこれから出版社と古本屋さんが仲良できる道があるのだろうか。】

  • 3月11日 MacWIREのページに「iMacもどきに世界的な規模の差止め命令が下る」(米国、3月9日付)、「iMacクローンに対し,米国連邦裁判所が世界規模で販売を禁止」(米国、3月10日付)。【アップルは本日10日,iMacのトレードドレス侵害に関する大宇とイーマシンズに対する訴訟が,米国時間の8日,円満に解決したと発表した。トレードドレス侵害とは,米国で認められている知的財産権で,同社の主張が認められたことにより,大宇およびイーマシンズは,世界的な規模でE-PowerならびにeOneの製造,流通,販売ならびにそのプロモーションが禁止される。】。読書録関連記事:iMacデザイン盗用問題(1月12、13日付)

  • 3月10日 『東京新聞』2000年3月9日付夕刊文化欄に南雲智「北京が変わった、けれど‥‥――露店が消え、よそ行きの顔」。【どこもかしこも綺麗になりつつあり、……たとえば、これまでは人が多く集まるような場所には必ず露店が出ていた。……こうした露店のなかでも、本屋を見て回るのは楽しみの一つ。中国でも一般の「書店」とは区別して「書攤子」(シュウタンズ)と呼んで区別しているもので、本や雑誌を手に取ってしげしげとながめていると、店のオヤジさんも気になるのか、必ず声をかけてきたものである。こうなると裏情報なども収集できて、楽しさも倍加した。ところが、当局側からみれば人の流れは滞り、…ましてやのぞき趣味の…ポルノまがいの雑誌や、政府や共産党批判をあおるような事件簿といった雑誌が堂々と並んでいたのだから、今こそとばかりに一気に排除に動いたのは当然だろう。……それに代わって日本の八重洲ブックセンターのような大型の書店が次々に現れている。また、有名ブランドを揃えたデパートのなかにも書店が入り、日本そっくりの形態。そこには売れ筋の経済、株、土地、国際政治、家庭、教育といった実用書がずらりと並んでいた。今や中国人は一攫千金に通じる情報源にとにかく敏感である。…さらに四十歳代までの男女に急増の離婚が象徴するように、夫婦や男女の性の問題を扱った女性向け週刊誌や雑誌は種類が多い。でも、こうした大きな書店はどこかよそよそしく、露店のようにオヤジさんと気ままに本談義もできない。怪しげな本や雑誌も、掘り出し物の古書が無造作に並んでいるということもなくなった。……】

  • 3月9日 辻下徹「国立大学独立行政法人化の諸問題」のページに、蓮實重彦「国立大学を行革の数合わせに利用するなど天下の愚策。」、金子勝「キャッシュフロー経営こそ狂気だ――グローバリズムを無抵抗に受け入れれば、本当に恐い「破滅のシナリオ」が待っている」、阿部謹也「岐路に立つ2000年」、豊島耕一「「学問の自由」から「学問をさせる自由」への発展か?――12月26日付け日経新聞の太田実論文を批判する」ほか。また「全国の大学職員組合発信の情報」に北から大学別に情報が並べられ全国組織、地方組織はその後に。3月9日付『朝日新聞』に国立大学の独立行政法人化に反対する大学人有志(代表・和田肇)による意見広告「国立大学の嘆きと苦悩。―私たちは国立大学の独立行政法人化に反対します。」。

  • 3月8日 【連載】小形克宏の「文字の海、ビットの舟」―文字コードが私たちに問いかけるものに3月8日、特別編 2 ISO/IEC 10646で却下された(?)JIS X 0213の新漢字一覧表。【ISO/IEC 10646で却下された(?)JIS X 0213の新漢字一覧表】を検討した小形克宏が直井靖の協力を得て【IRG側のミスではないかと考えられる文字】【IRGも日本側も両方間違えたと思われる文字】を提示している労作であり、必読! 典拠とした参照URLが明示されているのでぜひ全文にあたりたい。

  • 3月7日 「田中宇の国際ニュース解説」のページの田中宇「世界中の通信を盗聴する巨大システム」(3月2日付)が、アメリカ主導の国際盗聴システム“エシュロン”をとりあげている。田中は【米企業の利益に使われるエシュロン】として【ドイツやフランスが標的になっているとしたら、その目的は産業スパイに違いない・・・。ヨーロッパの政府当局者はそう考え、1998年初め、EUとして、諜報問題に詳しいイギリス人ジャーナリスト、ダンカン・キャンベル氏(Duncan Campbell)に調査を依頼した。その結果は、今年2月23日に発表された。それによると、アメリカ政府が盗聴によって得た情報を自国企業に流した結果、アメリカ企業が国際受注競争で欧州企業を打ち負かすという不正行為が、これまでに2件あった。ひとつは1994年、ヨーロッパ諸国が共同で設立した飛行機メーカーであるエアバス社が、サウジアラビアの航空会社に旅客機を売り込んだ時、米当局がエシュロンを使ってエアバスとサウジ航空当局者との電話を盗聴し、得られた情報を元に米政府が、エアバスがサウジ政府に賄賂を贈ろうとしていると指摘した結果、エアバスは受注競争から外され、代わりにアメリカのボーイング社が落札したというもの。もう一つは同じ年、フランスの防衛機器メーカー、トムソンCSF社が、アマゾン熱帯雨林を監視保護するためのレーダーシステムをブラジルから受注しそうになったとき、エシュロンで米当局が関連情報をつかんだ結果、アメリカのレイセオン社が受注を横取りした、というものだった。……英米の専門家の多くは、その信憑性を疑うコメントを出したのだが、その一方で意外な人物が、この報告書の内容を「認知」した。…それは元CIA長官のジェームズ・ウールジー(James Woolsey)だった。彼は、報告書で指摘された行為があったとされる1994年当時、CIA長官をしていたが、「ヨーロッパ企業の不正行為を止めるため、アメリカ政府が諜報活動で得た情報を使うことがあった」という趣旨の発言をして、アメリカの行為を正当化しつつ、盗聴の事実を間接的に認めたのだった。彼によると、エシュロンで得られた情報が、NSAやCIAから企業に直接渡されることはないという。だが盗聴結果は、政府内の部門である商務省にも渡される。商務省は企業の振興策を行っている部門で、アメリカ企業が海外で仕事を受注しやすい環境を作ることが任務の一つであり、欧州企業の不正を阻止するとの名目で、盗聴結果が企業に渡ることはありえる。】《関連必読サイト》エシュロン資料集@Der Angriff(河上イチローさん)。〔00.3.9補足:『東京新聞』2000年3月7日付に“「エシュロン」暗躍、米英が世界に盗聴システム?”と題した特集記事、『朝日新聞』3月9日付に“米英が産業スパイ?―報告、欧州議会に波紋”と題した記事〕

  • 3月6日 2月19日付読書録既報のMacOS Xへのヒラギノ搭載に関連してMacWIREのページに「Outside Macintosh and Design アップルに聞く−Mac OS X 日本語フォントはいかにして生まれたか」前編中編後編。菊池美範&松尾公也の質問にこたえて、櫻場浩 (プロダクトマーケティング課長)は【欧米ではいつも自分が使っているマシンに入っているフォントで会社でプリンタに出力をし,家庭でもおなじように本体にはいっているフォントで出力できます。ですからこれと同じ状況にしたかったんです。】、渡辺秦 (デザイン&パブリッシングマーケティング課長)は【出力トラブルをなくしたかったんです。RIPの問題もあるとおもいますが,やはりフォントの問題が大きいですね。本体とプリンタでおなじフォントをつかっていても,出力トラブルで文字化けなどがででしまう。ですから技術的な理想型は,OSのしくみを用意して,出力解像度制限のないフォントを持ち,プリンタフォントが必要なくなる方向にもっていきたい。もうその方向はみえていると思います。】、木田泰夫 (CJK テクノロジー インターナショナルテキストグループ)は【いってみればMac OS Xは,ある意味ではPDFマシンであり,ポストスクリプトレベル2/3のRIPでもあるんです。現実的に市場がそういう方向でいけるかどうかは別ですが。】と発言。
     ヒラギノのMacOS登載という吉報の本質はどこにあるのか、私(前田)の結論は三点に要約できる。第一に、ページプリンタであれイメージセッターであれ、プリンタがダムプリンタ化していくことは歴史の必然であり、そのことにアップルがより自覚的であるということ。第二に、フォントはOpenType、データはPDF、というアドビの長期戦略の正しさがじわじわと証明されつつあるということ。文字セットについてもUnicodeかどうかということではなくAdobeJapan1-4というセットがいよいよ本格的に力を持ってくるということである。第三に、さて残りのアドビの戦略はといえばInDesignだが、これが問題。フォント分野では“写研の呪縛”はヒラギノをデファクトにおしあげる正の面として作用したが、組版の分野では“写研の呪縛”はページコンポやエディカラーを通してInDesignに負の刻印をしるしている(00.2.18デモ版をみたかぎりの評価)。私は一抹の不安と共に、期待をもってみまもっている。

  • 3月5日 本山美彦「アジア経済の破壊者はだれか」〔『大航海』2000年4月号、新書館、掲載〕。【アジアの時代は終わったと言われ……クローニズムという非近代的な悪しき慣行が克服されないかぎり、東アジアは経済危機から脱却できず、近代的欧米的透明な企業組織を確立するためにも、アジア企業にとって、欧米資本との提携関係の強化は不可避とまで語られるようになった。】というジャーナリズムやアカデミズムの最近の論調に対して【しかし、そうであろうか。】と疑義をはさむ本山は、1990年から96年にかけてタイ、韓国、マレーシア、インドネシア、フィリピンに流入した3550億ドルという巨額の外資が、一斉に引き上げられたが【そうした浮動性の高い巨額の外資に対する備えがこの地域では十分できていなかった。…ところが、自前の金融組織の強化を行うのではなく、マレーシアを除く東アジア各国政府は、経済組織の近代化という名目の下で、競って自国の企業と金融機関を外資に売り渡すようになってしまった。……韓国第二の自動車メーカーを、大宇の決定ではなく、政府の決定として外資に売却する方針が存在したということに、IMF主導下のアジア危機対処策の意味が如実に示されている】とし、【IMFは、東アジア的安定構造を木っ端微塵に破壊してしまった。IMFの勧告を受け入れることによって、東アジアの企業は突如、流動性の危機の〔に?〕見舞われた】と喝破している。【一九九七年の経済危機に際してIMFから五八〇億ドルもの支援を受けたとき、韓国政府は、脆弱な韓国の金融機関を外資に譲り渡すという約束をIMFに対して行った】事実とともに、本山は、東アジアで1997年から99年半ばまでに、3500億ドルもの損失し(ドイツ銀行の推計)、1999年の1月から10月までに102億ドルの外資が韓国企業買収のために流入したという事実を指摘し、【米国MIT大学教授・ポール・クルーグマンによって、大成功であったと評価された韓国の金融改革は、莫大な公的資金の投入と大量解雇というおびただしい血を流して、外資に売り渡されることによって断行されたものである。それは、金融部門にとどまらず、韓国経済の基幹産業である重化学工業にまで、他ならぬ「金融監督委員会」の手によって、拡大されている。いまや、韓国そのものが外資、とくに米資本に売り渡されようとしていると見なしても大げさではない段階にきている。】とむすんでいる。

  • 3月4日 松本功「NGOとかNPOとかボランティアとか」がいい。これはHotWired Japanにのった山形浩生「NGOとかNPOとかボランティアとか」へのすぐれた批評である。山形は【「わたし、NGO/NPOなんです」と平気で言う】人たちに【おめーは一人で組織してんのか! そして、それが何をしているNGO/NPOなのか、こっちがきくまで話してくれない。】と怒っている。だが、だれがどこでやっているどういうNGO、NPOの活動にどのような問題があるか、実際の調査にもとづく事実をあげるのが批判ではないか。しかし山形は【海外援助の現場にいる人たちにとって、NGO/NPOは決して絶賛の対象ではない。現地に対して何の利害もない連中が、感情論と目先の光景だけで動いて自己満足な正義感をふりかざし、実は結果的にかえって有害なことをしている場合も多々ある。】というたとえ話で「事実を挙げる」ことにすりかえ、【かれらは自分たちがいいことをしていると確信しているから、聞く耳持ちやしないのだ。いやぁ、すごいなあ。でもその人たちの様子が想像つくだけに、笑えないよね。……フリーソフトの場合は、…結果についてだいたいだれにでもわかるきちんとした基準があること。えらそうなことを言ったって、善意だって、ダメなコードはダメなコードだし、だめなドキュメントはダメだ。……でもNPO/NGOと呼ばれるものでは、このための仕組みは存在しない。パフォーマンスは評価されない、明確な責任のしばりはない、非効率でも認められる。通常これは、腐敗と堕落の温床だ。そしていずれは利権が発生し、場合によっては利用され、さらに自己目的化してゆく。NPOやNGOだけがそこから逃れられるはずもないだろう。このプロセスを実にきちんと描いているのが、小林よしのりの名著『ゴーマニズム宣言スペシャル:脱正義論』だ。これはまさに、あるNPO/NGOの発生から一つの終わりに至るまでの克明な記録だ。】と主張し、【今後しばらくはNGOだのNPOだの言う声は高まるし、それがいろんな場面に引っ張り出される機会も多くなるのはまちがいない。ボランティア賛歌もいまより一層高まるだろう。そしてたぶんいずれ、今後10年くらいのうちに、思いこみで暴走しちゃったNGOやNPOの引き起こす大惨事が世界のあちこちで頻発するんじゃないだろうか。】と予言している。具体的であることから遊離した「もの知り屋」は結局のところ、組織一般を否定し、善意一般を否定し、なまはんかの知識をウェブ上でまきちらすだけである。〔00.3.14補足。どこのNGO/NPOがいつ為したどのような実践がだれにとって“有害”であったのかという事実の挙証責任、およびその“有害”は他でもなくNGO/NPOのシステムに起因するとの主張の論理的証明、これが果たされないかぎり、山形浩生のこの「説」はデマゴギー以外の何ものでもないと私は考えている(これは松本功のパロディに対する評価とは別の問題である)。

  • 3月3日 ▼人権・報道・インターネットのページに山下幸夫「「新潮45」少年の実名・顔写真掲載報道訴訟の控訴審判決を読む」。▼週刊かけはしのページに「大阪で権力と司法による労働運動弾圧をただすシンポ」。2月26日、大阪でひらかれた「警察・検察・裁判所をただす2.26シンポジウム“今、労働組合の権利が危ない”」のパネルディスカッションのもようと、【「権力の労働運動への不当介入に反対する全国連絡会議」の結成が、中岡基明さん(全国一般全国協議会議長)から提案され賛同を得た後、中岡事務局長、小谷野毅(中小労組政策ネットワーク)・山原克二・加来洋八郎(全港湾大阪支部)・奥園健児(建設運輸連帯労組)の4人の事務局次長体制で運営していくことが確認された。】ことが報じられている。

  • 3月2日 ▼2000年3月1日付「韓国の声」45号に小林恵「韓国の労働者・民衆の闘いにふれて」。韓国の労働運動ではマルクス主義は生きていることを訪韓して実感した小林は【80年代に総評の解体攻撃が強まり、ソ連崩壊を決定的な契機として、多くの自称「マルクス主義者」たちが「資本主義の勝利」を謳歌する体制の思想攻撃に打ち勝てず、自らマルクス主義を屑籠に投げ捨ててきました。……労働運動は思想的バックボーンを失い、指導部は限りなく国家・資本と一体化し、連合の労働組合は議案書がまるで企業の宣伝文書のようです。……80年代、日本の出版物を通してマルクス主義を始めとした社会思想を学ぶために、多くの活動家が日本語を学んできたと聞きます。チョン・テイル記念事業会の本棚には日本語版の資本論が並んでいました。それは想像を絶する危険と、血の犠牲を伴った粘り強い闘いであったと思います。そして今なお、国家保安法は息の根を止められていません。こうして韓国の労働者は自らの武器となる理論・思想を求め、労働者解放の理論・思想としてのマルクス主義を奪い返し、闘ってきたのだと思います。日本の現状と対比しながら、労働者自身の理論と思想を奪い返していくことはとても重要なことなのだと思いました。】。▼Language/PowerのページにL/P編集チーム「米予備選で候補名を日韓中語表記」。【予備選集中のスーパーチューズデーを控えますます白熱する米大統領の予備選だが、2月8日付日経新聞によれば、そのスーパーチューズデーに予備選が行われるカリフォルニア州のロサンゼルスで有権者に配る小冊子には、各候補の名前が中国語、韓国語、日本語でも表記される。アジア系有権者の投票参加を促進するねらいで、英語力が不充分な有権者の読み違いを防ぐための実験的試みということだ。ちなみに投票自体は英語で行われる。】

  • 3月1日 「文化通信(オンラインコラム)」のページに星野「業界の異端児だから?」。【小出版社が集まってオンライン販売を行う「版元ドットコム」と、コンピューター出版社が出資してコンピューター書籍・ムックのオンライン販売を行う「cbook24」というサービスが始まる。「版元ドットコム」は、ポット出版、青弓社、凱風社といった小規模出版社が、自分たちで書籍データベースを公開し、注文された本を送料無料の宅配便で届けようという試み。一方の「cbook24」はもっと大がかりで、コンピューター書1万6千点のデータベースを公開し、佐川急便のハブセンターに設けた専用在庫から配送する仕組み。こちらにはアスキー、ソフトバンクパブリッシング、インプレス、技術評論社、翔泳社、日経BPなどが出資……今までだったら、出版社が集まって直接読者に本を販売するシステムを作るなんてことは、書店や取次の手前、かなりリスキーなことだった。昨年、取次大手トーハンがオンライン書店eSBooksに商品供給すると発表したときの書店の反発は相当であった。……今のところ業界の反発はほとんどない。しかし、ただでさえ本が売れないご時世である。こうした動きが拡大していけば、いずれ近いうちに老舗・大手といわれる出版社も、新たな販売ルートに注目することになる。今は業界の異端児的に捉えられている2つの試みも、出版業界が本格的にインターネットをビジネスとして利用し始めた先行例として、記憶にとどまることになるかも知れない。】