読書録 1999年11月後半(敬称略)

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  • 11月30日 山之内靖『日本の社会科学とヴェーバー体験』1999年11月、筑摩書房。【二〇世紀の歴史を語るとき…帝国主義という言葉によってはうまくとらえることができない…本書では総力戦という規定を中心におくこととした。……第二次世界大戦後の日本において有力な学問的潮流の一つであった市民社会派の形成を、総力戦状況という歴史の中に位置づけなおし、そこからこの学派の問題性を吟味すること】という問題意識から山之内は【帝国主義には、どうやら多文化主義に傾斜する性格が内包されているらしい。それに対して総力戦の時代状況においては、そうした多文化主義によっては対応できない過激な国民的統合が要請された。その動向はファシズム諸国において民族神話による強制的統合としう姿をとったのであり、…アメリカの場合にも同様…冷戦時代を神話化された功利主義的原理ともいうべき近代化論によって戦い抜き、これをイデオロギー的支柱として覇権を維持し続けたのであった。】【ヨーロッパ近代をモデル化した市民社会派の方法によっては、現代社会が全体主義的性格を強度に帯びているという事態は理解できない。総力戦という時代状況は社会の全体主義的変質を呼び起こし、それとともに社会科学のあり方も大きな転換を経過した。この変容を私は階級社会からシステム社会への移行として捉えたのであったが、しかし日本にも、私とは別の経路をたどって市民社会派から離脱してゆき、私と同様に現代社会を全体主義と規定する人物が現れていた。藤田省三である。……藤田の最終的な到達点は丸山の初発の課題への立ち戻りにほかならなかった。同様に本書での私の作業も、丸山のスタートラインに立ち戻って市民社会派の全作業を吟味しなおす営みだった、ということができる。社会科学的認識に現れたこの逆説は、しかし、総力戦という状況の巨大な逆説――近代合理性は軍事技術・管理技術となってその頂点に達するのであるが、この頂点に達した合理性の枠を集めて無制限な破壊と人間性の否定が遂行されるという逆説――が生んだアイロニーにほかならない。】

  • 11月29日 竹岡俊樹『「オウム真理教事件」完全解読』1999年11月、勉誠出版。【私たち日本人は多くのものを水に流して忘れてきた。…実は私たちはその不快や割り切れなさを自分の身の内に引き受け蓄積し続けてきたのではないだろうか。現在続発している通り魔殺人などの不可解で狂暴な事件は、日本人のこの負のエネルギーがもはや許容量を超えてしまったことを示しているのではないだろうか。……彼らが、この病んだ日本社会の中から癌細胞のように生まれ増殖したものであるということを私たちが知っているということ。それこそが、私たちがこの事件に対して感じる不快感の最も大きい理由ではないだろうか。】という竹岡は【日本社会を捨ててきた信者たちにとっては偽りの現実世界が見えることより、真理の清浄なる精神世界が見えることの方が価値をもつ。それ故、彼らは暗室にこもり、目をつぶって修行に励むのである。…現実世界を滅ぼした時、松本の創ったこの私たちにとっては暗闇の反世界が全面的に勝利することになる。しかし、その反世界はあくまでも現実世界に対して構築され、現実世界からの栄養で存在しているから、現実世界が消滅すれば反世界も消滅する。まるでマイナス(反世界)とプラス(現実世界)とがぶつかり合ってゼロになってしまうように。】

  • 11月27日 ▼朝鮮新報のページ99年11月26日付ニュースPIC-UPに「駅の表示など正しいウリマルに/南の鉄道省、12月から」。【南朝鮮の鉄道庁は、日本語の漢字表記や中国式の漢語をそのまま朝鮮語で読んでいた鉄道用語を、正しい朝鮮語に分かりやすく改めることにした。駅の表示などを書き換え、12月1日から実施する。日本式から改めるのは、「テハプシル(待合室)」→「マジパン(待つ部屋)」、「ケピョ(改票=改札)」→「ピョファギン(切符の確認)」など。また中国式からは「チョンドヨク(前途駅)」→「タウムヨク(次の駅)」、「ウォルスン(越乗)」→「トーカギ(乗り越し)」などだ。南では1900年に日本が初めて開通させた京仁鉄道以来、当時の漢字表記による鉄道用語をそのまま使っていた。ちなみに北では待ち合い室を「キダリムカン(待つ部屋)」などと、固有の朝鮮語中心の表記。】。なお“正しい”というのは朝鮮新報の表現、念のため。▼Language/Powerのページに「韓国の英語共用語化論争」。【韓国朝鮮日報10月28日付けの報道によると、「自由企業センター」と「韓国 小説家協会」は、11月2日ソウルのスイスグランドホテルにて、英語共用語化 問題をテーマにする討論会を開き、韓国社会の英語共用語化を正式に提起する という。】

  • 11月24日 家辺勝文のウェブノート「A batons rompus」99年11月22日付に【『人文学と情報処理』No.23(勉誠出版、奥付では1999年8月30日発行)は、「デジタル百科への期待」を特集。検索の利便性、データベースとしての有用性といった月並みな紹介を超えて、『日本大百科全書+国語大辞典』(スーパー・ニッポニカ)(小学館)における「長文を読むに堪える組版」の追求は刮目に値する。画面表示用フォント「小学館明朝」の開発、1行20字、段組としながらも行数可変で横スクロール、といった特色は挿図を見るだけでも一目瞭然の差異を感じさせる(インターフェース・デザイン:向井裕一)。いかに検索の道具としての優位性を備えていても、「読むに堪えない」デジタル辞典はテキストの墓場だ。】。組版仕様設計の向井裕一によればまだまだ未完成であり、近く出るWindows版ではさらに改良されたものが出るとのこと。

  • 11月23日 Alternative Mailing Listのページに小倉利丸「国際的な諜報ネットワークと日本の関与について」。【合衆国議会で、コードネーム、「エシュロン」として知られるNSAを中心とする欧州の通信傍受システムが問題とされ、…以下のレポートは…「被害者」としての日本の問題ではなく、日本もまた、国際的な諜報ネットワークに何らかの形で加担している可能性があることについて、現在知りうる情報をもとにして作成された。多くの皆さんによって、更に事実関係が明らかにされることを期待するとともに、情報の提供を呼びかけるものです。】としてエシュロンの概要と歴史を示した小倉は、「UKUSA秘密協定と日本の関与」として【「秘密条約」で相互に情報交換する諜報組織は、米国の国家安全保障局(NSA)、オーストラリアの国防通信理事会(DSD)、英国の政府通信局(GCHQ)、カナダの通信安全保障局(CSE)、ニュージーランドの政府通信安全保障局(GCSB)である。実はこの「秘密条約」の参加国はこれにとどまらない。このほかに、10各国が参加するようになる。オーストリア、タイ、韓国、ノルウェイ、デンマーク、ドイツ、イタリア、ギリシャ、トルコそして日本である。 UKUSAと略称されることもあるこの国際的な通信・信号を主要なターゲットとした諜報ネットワークは、戦時中には英米の敵である枢軸国側をターゲットとしたが、逆に戦後の冷戦体制では、かつての敵国であったイタリア、ドイツ、日本を加え、ターゲットはソ連、東欧、キューバや中国へとシフトする。】とし、さらに「三沢基地及び自衛隊の関与」についてもレポート、【日本政府は、UKUSA秘密協定への関わりを明確にすべきである】と要求している。

  • 11月22日 新JIS漢字策定の進捗状況のページに、JCS WG2主査 芝野耕司「JIS X0213 規格化決定」(1999年11月16日)。【新JIS漢字案が,日本工業標準調査会情報部会を通過し,日本工業規格として制定される事が決定しましたので,御報告します。[情報部会通過] 1999年9月27日,10月25日に開催された日本工業標準調査会情報部会は,符号化文字集合調査研究委員会(JCS) が提案していた新JIS漢字原案を慎重審議の結果,一部規格内容の修正を経て,全会一致で可決しました。現在は,海外への意見照会プロセスに入っており, 2000年1月20日に,JIS X0213 として日本工業規格として制定される見通しです。 [規格内容の修正] 情報部会による修正は,次の通りです。Shift JIS実装(附属書1), UNIX 系 EUC 実装(附属書2),インターネット ISO2022-JP3実装(附属書3)に関する内容を,規定から参考に変更する。変更理由は,この規格で規定する実装しか認められないとすれば,メーカが供給する実装を大きく制限するものとなる事から,自由度を広げるため,参考に変更するものである。 ……】

  • 11月21日 「文化通信速報版」1999年11月19日付、が【99年1―10月で転廃業書店1000店を超える。アルメディア調査。】と報じている。

  • 11月19日 Language/PowerのページのPing He「中国における漢字の法治化」が、1999年10月22日に発表された国家言語工作委員会による漢字に関する最新の規範「漢字規範」をつたえている。【「漢字規範」と呼ばれるこの法令は、四つの内容からなっている。 一、印刷用の魏書体フォント、 二、印刷用隷書体フォント、 三、漢字筆順基準、 四、画数に基づく漢字配列基準、である。実はこれまで、電子データによる漢字の情報処理という分野では、さまざまな基準が乱立しており、データの保存 と交換の上で、すでに大きな支障が出てきたことが、その背景にあると考える。  さて、最新の規範の実効性はどうだろうか。発効したばかりだからまだ不明だ。だが、中国における漢字使用の混 乱を避け、いっそう標準化することが望まれると、専門家の間では高い評価を得られている。ただ、従来のマイナス 財産は、数多く残っている。たとえば、コンピュータのOSは、最新バージョンのMACのOS9にしても、WINDOWSの 98seや2000にしても、この一本の法令で全部問題解決できるとはとても思えない。したがって、今後予想される数 年の間、これらのOSによって事実上規制されている、中国の漢字使用は、おそらく立法者の期待通りにはならないだ ろうと、筆者はひそかに心配する。しかし、もちろん長い目でみれば、画期的な意義をなすに違いない。】

  • 11月18日 杉浦康平ブックフェア「『本』の森羅万象」〔時:1999年10月15日(金)〜11月30日(月)、場所:青山ブックセンター本店・六本木店・新宿ルミネ2店の三店鋪の人文思想書コーナーにて〕

  • 11月16日 地下鉄サリン事件への問題提起のページの三浦雑記帳11月12日付に「河野義行さんの講演(4)―ポリグラフ(嘘発見器)」。【…河野さんの話で一番おもしろかったのは、ポリグラフの件だった。科学機器による警察の演出(はったり?)を、河野さんはしっかり見破る。河野さんは仕事柄、科学機器の知識をもっている。それが幸いしたのだろう。今回はそれを紹介。】▼aml mailing list 99/11/14付〔11/21付で「前回のものは、急いでまとめたために、不正確なものや誤字誤植がありますのので削除」とのことなのでURLも変更、11/22記〕「『国民の歴史』のばら撒きの実態」は、本の売り方、世論の作り方(?)という側面からみても興味深い。もっとも動機と志が低劣であれば庶民の魂にふれることはできないだろうけれど……。