8月31日 渡辺保史『デジタルコンテンツの知的所有権』1998年3月、オライリー・ジャパン刊。北村行夫『判例から学ぶ著作権』1996年6月、太田出版刊。判例という“現実”は、すでに存在する権源としての現実の著作権に対応できていないことを如実に示している。特許通はインターネット上の知的所有権情報に関するサ−チエンジンであり、石豆腐のページには知的財産関連(特許、判例)リンクがある。
8月29日 ●何徳倫『中国インターネット案内』1998年7月、日本エディタースクール出版部刊、ISBN4-88888-278-9。Windows、Macintoshそれぞれの環境での中国語インターネット環境づくりから中国のWebサイト紹介、さらに中国インターネットの歴史と現状について、わかりやすくまとめられている。とくにCERNet(国家教育委員会)、CSTNET(中国科学院)、CHINA NET(郵電部)、China GB Net(電子工業部)の4大ネットワークの紹介では直接の取材もまじえてレポートされ、国際インターネットとの接続インターフェイスの通信速度も8Mbpsから25Mbpsになるなどアクセス環境も急速に改善されつつある最新の状況についても書かれている。●平木敬太郎「東大明朝批判の不可解」は志の低さを露呈して語るに落ちる「批評」だ。
8月28日 斎藤貴男『カルト資本主義』1997年6月、文藝春秋刊。科学と社会を考えるうえで、現代の国家独占資本のもとでの財界と科学技術の関係もまた点検されねばならない。この本のなかではひとつのエピソードにすぎないが、京セラの稲盛和夫がおそるべきオカルティストである事実が、稲森が阪神・淡路大震災の直後、被災地の塾生たちに対して語った講話として書かれている。いわく【大病になるとか挫折するとか、そういう災難に遭うのは、自分が過去に−−先祖をも含めて−−魂が積んできたカルマ、業というものが消えるときなのです。私は皆さんに、災難に遭ったら喜びなさい、とよく言います。……実際、今度の震災では不運にも亡くなられた方がたくさんいらっしゃいますが、皆さんはこうして元気に生きておられます。……土地にもカルマがあります。神戸周辺は昔の源平合戦やいろんなことがあって、そこには定着したカルマがあったでしょう。私には、そういう積み重ねられたカルマを清算するために、今度のような大震災が起きたとしか思えません。】(盛和塾編『経営者たちの大震災−稲森和夫と経営者たちが語るクライシス・マネジメント』1996年、出版文化社刊)こういう男を“財界のニューリーダー”ともてはやしているのだ、この国では。
8月27日 家辺勝文「ごぞんじですか? JIS漢字の現状と拡張計画」(『専門図書館』No.170、1998-7-25、ISSN 0385-0188、専門図書館協議会、所収)。家辺勝文は、むすびで【JISの符号化文字集合が規定しているのは、文字の使い方ではなくデジタルコードの使い方である。すなわち一つのデジタルコードが現実に存在するどの文字を表現できるかを規定する。工業規格はむしろ文字の実際の用法に追随するものである。JIS漢字の歩みには多くの問題も含まれているが、漢和辞典にも載らない地名を含む6000字レベルの漢字表現力によって、コンピュータによる日本語情報交換の基礎を作り上げてきたことはゆるぎない事実である。また公的な規格だからこそ、誰もが率直な批判をぶつけることができ、それゆえに大きな進歩の可能性をもつことも忘れてはならないだろう。ユーザーの一人ひとりが文字の用法についての理解を深め、拡張計画を含むJIS漢字の今後に注目しつづけていきたいものである】と述べている。私は全面的に同意する。
8月26日 ●朝治武・灘本昌久・畑中敏之編『脱常識の部落問題』1998年5月、かもがわ出版刊。かつて藤田敬一が『同和はこわい考−地対協を批判する』1987年6月、阿吽社刊、で述べた「こうした対話が続けられるかぎり部落解放運動の蘇生は可能」という希望的確信に共鳴してから早11年経つ。本書で守安敏司が述べているように、【部落解放が実現し被差別の状況が存在しなくなれば部落民(部落)のアイデンティティーがほとんど存在しなくなる、ということと同じではないのか。つまり、部落民(部落)のアイデンティティーを主張すればするほど差別が不可欠になるというディレンマに陥らざるをえないのではないか】という問いは、小熊英二が『〈日本人〉の境界』(8月13日付「読書録」参照)で述べた問題意識、つまり被差別者集団が「日本国民に成り上がる」運動で得たものはいったい何だったのかという問いかけにつうじるものがあるのではないか。●22日に紹介した『本の窓』1998年9・10月合併号(小学館)掲載の芝野耕司「メディアとしての文字とJISでのその電子化」の紙幅制限のため掲載されなかった部分を含む文章がWeb上で公開された。URLはhttp://jcs.aa.tufs.ac.jp/jcs/X0208/
8月25日 ●マーク・B・アダムズ編著、佐藤雅彦訳『比較「優生学」史』1998年7月、現代書館刊、を読了。ドイツ、フランス、ブラジル、ロシアの「優生学」の歩みを科学史から見て比較検討している。混乱と危機の時代には露骨な差別思想がもっともらしい理屈によって隠蔽されながら急速に広められることは洋の東西を問わず共通しているようだ。ヒトを関係性から切り離した“モノ”として「品種改良」しようというこの技術専制支配の哲学は今も生きており、批判していかねばならない。ここにもテクノロジーと社会との相関関係についての教訓がある。●刮目して待ちに待った(!)永瀬唯「しっぽのしっぽ、その2/その3/その4」が出た。締めくくりに述べられた「加藤氏は過誤の情報を意図的に流布したことを全面的に認め、金井美恵子氏に謝罪すべき」「加藤氏と版元…は、単行本『石川淳 コスモスの知慧』の絶版処分と、適切な引用をおこなった改訂版の、デジタル形式または印刷本形式での発行という処理」という提案を私は支持する。あわせて文字コード問題に関心を寄せるすべての方々がこの文献に目をとおすよう訴える〔このWebページを読めてもNIFTYは読めない、という方はご連絡ください〕。
8月24日 先日、NIFTYの歴史フォーラム(18−6856)の永瀬唯「漢字消費者の弁」を紹介したが、続きが出た(18-6861)。永瀬唯「(超長文)ヒトラーのしっぽ、のしっぽ」がそれだ。反JISキャンペーンに精を出す加藤弘一の「現在のJISには旧字が一部しか入っていませんから、ワープロで書く以前には思いもよらなかった障害に悩まされることになる。僕の『石川淳 コスモスの知慧』はフロッピー入稿したのですが、第二水準でカバーできる旧字は全体の三割程度なので、この状態ならば新字に統一したほうが早いといわれて、結局は引用文もすべて新字になりました」という発言を実地検証していて明解である。文字コード問題を世に広める役割を果たした側面もあるんだから免罪してやるべき、との意見もあるが、加藤のような“ためにするデマ”の垂れ流しに対しては社会的責任をとらせるべきだと私は思う。
8月23日 すべての車両の移動をTVカメラとコンピュータによって監視・記録保存する、警察庁による国民監視システムNシステムについてNシステムHomepageが具体的な事実を暴露している。近くシンポジウム「Nシステム激論会」が開かれる。8月29日(土)午後6時、中野サンプラザ(JR・地下鉄中野駅北口正面)8階研修室、会費無料、主催:月刊ニューモデルマガジンX編集部(http://www.mook.co.jp/magx/)
8月22日 ●月刊『本の窓』1998年9・10月合併号(小学館)が「コンピュータと文字」を特集している。坂村健・吉目木晴彦「対談・電子文字の今後と文学」、芝野耕司「メディアとしての文字とJISでのその電子化」、伴友貴「アジアのコンピュータ文字をデザインする」。坂村健、芝野耕司両氏が誌上でとはいえ同席したことは「画期的」である。●NIFTYの歴史フォーラム(18−6856)の永瀬唯「漢字消費者の弁」が“論争で叩かれた加藤弘一”を描いて秀逸。「こちらが何もしなくても、安楽さのみを提供してくれる理想の商品をひたすら待ちのぞむことに、何ら疑問をいだいていないという点において、彼らは消費者にすぎない。」「千年王国の到来をひたすらに、口をぽかんとあけ、ぴーぴーと求めこがれる……。何のことはない。その無残さは、千年王国と消費文明の結合という点において、あのオウムの無残さ、そして滑稽さにきわめて似通っている。」そのとおり!●『WIRED』(DDPデジタルパブリッシング刊)が来月で休刊とは残念至極。馬鹿『uno!』(馬鹿朝日新聞社刊)の休刊は遅きに失したぐらいで、目出度いことだったが。
8月21日 文字コード問題で、ためになる最新情報を得ようと思えば、「池田証寿のページ」がおすすめ。充実したリンクは、必要なものが網羅されている。きのうも、池田証寿「基準と規準---包摂規準をめぐる混乱---」、益山健「文字・コードに関する覚え書き」、小林龍生「『漢字文化は危なくない』ユニコード(Unicode)最新動向」が紹介されている。冷静な議論へ向けて、たいへん勉強になる。
8月20日 ●佐々木力『学問論−ポストモダニズムに抗して』1997年3月、東京大学出版会を読んだ。「二十世紀における科学思想の転回」で筆者はテクノロジーの社会構成主義的位置づけについて書いており、テクノロジーと社会との相関関係を社会の方をより根源に据えた見方として訴え、【「真理」が生命を打倒するような社会を改革し、社会が科学やテクノロジーの「真理」を馴致しうるように自己確立を図ること、このことが二十世紀の科学やテクノロジーへの歴史的・哲学的省察が遺してくれる教訓であ】る、としている。同感。●宮崎学「日航総会屋事件について」に注目を。
8月17日 文字コードのことを論じるならまず読め、というほどの名著『Understanding Japanese Information Processing』(邦訳・日本語情報処理、ソフトバンク刊)を書いた Ken Lunde が10月に新しい本を出す。オライリーのウェブページにカタログが載っている。『CJKV Information Processing』と『CJKV Reference Guide』だ。その書名どおり漢語(C)、日本語(J)、朝鮮語(K)、ベトナム語(V)の情報処理を扱っていて、as well as coverage of three additional languages and how these writing systems impact contemporary Internet resources, such as the World Wide Web, Java, and Adobe Acrobat.とのこと。今から楽しみだ。
8月16日 8月5日、京都地方裁判所において、高山登久太郎会津小鉄前会長が起こしている国家賠償請求訴訟公判の本人尋問が行われた。法廷での証言が公開されている。またこの記事が掲載されている「キツネ目の男」宮崎学のページには、他にも寺澤有「風営法改正が警察のインターネット支配のはじまり」など読み応えのある記事が載っており、おすすめ。
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