読書録 1998年8月前半 (敬称略)

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  • 8月15日 『創(つくる)』9月号が「三浦和義“メディアとの闘い”」を特集。三浦和義、浅野健一、山際永三、三氏の座談会、山口正紀の報道検証、弁護人・弘中惇一郎の総括講演とも〈疑惑報道に対する有罪判決〉を事実にもとづいてうきぼりにしている。

  • 8月14日 『言語』8月号が「“多言語主義”のゆくえ」を特集し、『現代思想』8月号が「液状化する日本語」を特集している。とくに後者では安田敏朗「『方言』認識の諸相」に注目。筆者のいうとおり、「内なる多言語」としての方言の検討は、多言語多文化社会を日本が標榜しようとするならば避けて通れない。近年、方言の社会的評価が高いが、方言の延長線上に植民地諸言語が置かれていたという歴史への眼差しが忘れ去られているように思える。同じ筆者の近刊『「方言」の語り方』が楽しみだ。

  • 8月13日 小熊英二『〈日本人〉の境界』1998年7月、新曜社。800ページ近い大著であるが、5800円+税で(!)買って損ではなかった。沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで−という副題が示す範囲を扱い、「日本人」の意味する範囲の変化の歴史を追っている。日本人であって日本人でない存在の人びとの歴史的事実が示すとおり、アイデンティティをもとめて「日本人」であることにのめり込んでいくことは《有色の帝国》のいっそうの支配のもとにおかれることにしかならない。イ・ヨンスク『「国語」という思想』岩波書店、で「日本語」の成立を知り、この本でまた「日本人」の成立を知る。なお、書名は《有色の帝国》のほうがよかったと思う。

  • 8月12日 ●中公文庫の新刊、宮崎市定著/礪波護編『東西交渉史論』のなかに「歴史的地域と文字の排列法」という小編があり、「言語の層の後に出来た」「文字の層は」「字形の層と排列法の層との複合体」という立場から西アジアの「右から文字」、南アジアの「左から文字」、東アジアの「立て書き文字」のそれぞれの系譜と戦いの歴史を描いており、その発想がおもしろい●「実話時代BULL」9月号が、この秋にも法務省が国会を通そうとしている新暴対法(組織犯罪対策法)について、正延哲士「“犯罪捜査の目的”という大義名分のもと、もっともらしい法解釈の裏に隠されたドス黒い意図を摘み出せ」、大口昭彦「怖るべき平成の治安維持法の歯止めなき運用と解釈」という力作レポートを掲載しており注目●「キネマ旬報」の6、7、8月で映画「プライド」をめぐる山根貞男と山田和夫との論争が進行中。小生は山根「映画“プライド”を擁護する」(7月下旬号)を支持する。

  • 8月11日 7月15日に開かれたJPCのセミナー「解明!文字コード問題のすべて」の講演記録がWebに載った。直井靖「文字コードに関する問題点とソリューション」小池和夫「漢字の扱われ方の昨日・今日・明日」だ。また、NHK衛星テレビでの7月25日の放送も注目。

  • 7月24日 丹生谷貴志(神戸市外国語大学教授)が1998年7月24日付『読書人』の「"98年上半期の収穫アンケート」で【…進行中の「東大明朝―六万四千字」を巡る文字デザイナー鈴木一誌氏らによる批評活動。これは「フーコー的権力論」の一つのケース・スタディとなるはずである(『ユリイカ』5月号を参照)】と私たちの批評活動をとりあげてくださっています。