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ストレートな批判
浮わついたブームに対する警告
書評『食べもの運動論』
行岡良治著 太田出版刊 ISBN4-87233-723-9
2003年2月
天 笠 啓 祐
科学ジャーナリスト
『週刊読書人』第2473号 2003年2月7日付に掲載されたものを著者の許諾を得て転載
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 | 行岡良治著
『食べもの運動論』
46判・311頁・1714円
太田出版
4-87233-723-9 |
一九八六年,チェルノブイリ原発事故が起き,放射能で汚染された雲が日本を直撃した。その時,反原発運動は空前の盛り上がりを見せた。最大の原動力となった人たちが食べ物の安全にこだわった女性たちだった。有機農業で安全な野菜を作っていても,いったん原発事故が起きてしまえば,その努力は無に帰す。そのことを知ったからである。
食べものが運動の主役になる時,運動は強くなる。それは食べものが大地に根ざしているからだ。大地にしっかり足をおろした運動は,なかなか動き出さないが,いったん動き出すと,粘り強い。最近でも,遺伝子組み換え作物をストップさせるなど,底力を見せている。本書の主役は,その食べものにこだわる人たちである。
著者は,その食べ物にこだわる人たちのリーダーともいえる存在である。食べものを商品にしてはならない,という言葉から始まる。しかし,現状はほとんどの食べものが商品化している。その商品を食べものに取り戻さなければいけない,それが本書が展開する食べもの運動である。
舞台は,グリーンコープという生活協同組合である。そこでの日々の活動を軸に展開していく。食べもの運動の歩みはけっして平坦ではなかった。まず,生協の組合員主権を確立していくことも大切だ。そのために組織を思い切って変えていく。生協での労働を「賃労働」にしないためにどうするか。ワーカーズの仕事を増やしていく。グローバリゼーションと闘わなくてはいけない。そのため第三世界の人たちとの連帯に基づくフェアトレードを実践していく。
このような,著者の言葉を借りれば「権力から連帯に」戻していく苦闘の日々がつづく。ある人が,著者のことを「生協の精神をもった最後の人物」と表現したことがある。スーパーマーケットとほとんど変わらない店舗の生協が多くなる中で,こだわりの食品をそろえるグリーンコープの活動はユニークである。
それを支える独自の哲学がある。例えば人間と自然の共生について「人間の方が自然の都合と本当に共生できるほど柔らかくなるしかない」といったり,「私たちが使う言葉をどれだけやわらかく,自分の意にまっすぐな言葉に変えていけるか」が,権力を連帯に戻すキイだという。
「日本生協連というのは,「そごう」とほとんど同じことをしている」といった,ストレートなものの言い方で,批判の舌鋒も鋭い。
本書は,すべてが「語り」である。通常,講演などとを集積した本は,重複が多く,全体を読み通すことが苦痛になることが多いが,まったく飽きさせず,あっという間に読み終えてしまった。それは著者の個性によるところが大きい。
いま,食べものの安全性に関する関心が高まっている。本書は,この浮ついたブームに対して,しっかり大地に根をおろした運動として取り組まないといけないよ,と警告しているように思えてならない。
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(おわり)
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